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中学二年生  作者: 多摩屋
ニート編
26/33

第8話


「こ、コイツ、死んでますよ!?」






 ――――関東某所にある『株式会社Fake World』が入ったビルの地下ではログアウトと言う名の逆召喚作業が行われていた。


 教会にてログアウトの祈りを捧げるプレーヤーに対し、ラリホーの呪文で強制的に眠らせ服を着替えさせる。

 次に『次元の歪み』と呼ばれる異世界間移動ホールに宅配便の荷物よろしく、ポイッと投げ込む。


 転移してきたプレーヤーをエセVRダイブ装置に戻し、ゆっくりと覚醒させる。



 これがログアウトだ。



 そんないつもの流れ作業のはずが、今日は少し違ったようだ。



 最近DURACUEから地球に渡ってきたばかりのタロウは見習いらしく、一番の重労働であるログイン搬入、ログアウト搬出担当になったばかりだ。



 異世界――――地球に渡るためにはDURACUEの王国騎士学校を卒業した上で、難しい試験にパスしなければならない。



 半年前、3回目の試験でやっと合格したタロウは地球文化に触れられる事を楽しみにしていたのだが……現実は厳しいものだった。




「あの……先輩。私、いつになったら外に出られるんですかね?」



 先輩と呼ばれた男は黙々と作業を続けている。



「せっかく試験に合格して地球に来れたのに、半年間ずっとこの地下に缶詰ですよ?AKB48ってやつを見てみたいなぁ……」



「黙って作業しろ。手を休めるな」




 先輩の言葉に肩を竦めつつ、嫌々ながらも作業を続けるタロウ。




「あ、コールが来ました。ログアウト来ますよ」



 ブザーのような音が鳴ったと思うと、地面に描かれている魔方陣が黒い光を放ち、次第に大きな穴となる。その穴は渦を巻いたかと思うと、ブリッと放屁音を思わす音と共に裸の青年を吐き出す。



「あーぁ、これが女の子だったら役得なのに、男女別なんだもんなぁ……。うわっ、こいつ可哀想なくらい不細工だな……。ん?……あれ?…………せ、せ、先輩!こ、コイツ、死んでますよ!?」




 魔方陣から吐き出された青年は後頭部が陥没し、鼻からは血が、口からは舌がだらしなく伸びていた。




「チッ、またアイツだな。おいタロウ、構わねぇからそのままDURACUEに送り返せ」



 え、でも……と困惑しているタロウ。



「多分、クサッツの神父役のナダギーのせいだ。あいつ凄ぇ短気だから、またプレーヤーに軽口叩かれてムカついたんで撲殺したってとこだろう。しかし死んだままで送り付けるたぁ、いい根性してるじゃねぇかあの野郎。俺自らぶち殺してやる」










 ――――――――。







 ハッ。

 えっと、ここはどこだ?


 あ、そうだログアウトしたんだった。


 痛てて……なんか頭が痛いんだけど。

 VRが脳に悪い影響とか与えたりしてないよな……。



 さて、帰ろう。

 特に受付とかないよな?あってもぶっちぎるけどね。喋れないし。



 しかしVR技術って確立されてたんだなぁ。


 凄いなあ、日本の技術力は。

 明日もまた来ようっと。






 ――――彼は自分が一度死んだ事など知る由もない。








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