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中学二年生  作者: 多摩屋
ニート編
25/33

第7話

評価がついて、お気に入り登録までついたので、嬉しくて連投。

 あの後、僕は何も言わず村長の家を出た。今の自分と想像上の自分との違いをまざまざと見せつけられ、居たたまれなくなったからだ。



 このゲームは基本、容姿の変更は出来ないらしい。なのに、なのにあの超絶美人男の娘の容姿。


 あんな奇跡みたいな人間が実在しているとは……。



 なんだよ、なんなんだよ!!

 斑鳩飛燕は僕だけのもののはずだ!


 なのに、なのに……。










『男の娘』か……。



 萌えるな。






 違う違うっ!


 クソッ、せめてゲーム内での実力くらいはアイツに勝ってやる!初期クエストも終わったことだし、後は僕の自由だ。ゲーマー歴10年以上の僕を舐めんなよ!すぐに強くなって見返してやるっ!


 よし、まずは教会でステータスを確認しつつ、今の自分に出来ることを分析だ。





 村の中央に位置する教会は他の建物と同じく、ログハウス調の掘っ立て小屋だった。神父の格好をした人が前に立ってたから教会だと分かったけど、普通なら絶対に分からないだろう。



「おぉ、まよえるこひつじよ、しんせいなるきょうかいになんのごようかな?」



「あ"?ステータス見に来たに決まってんだろうが。糞神父が」



 中の人は基本的に居ないという事はじじいに確認済みだ。そんなAIなんぞに緊張したりはしない。逆にささくれ立った僕の心の捌け口にしてやる。



「……ステータスえつらんには10ゴールドかかりますが、よろしいですか?」



「さっさとやれよ、グズ!」



「……10ゴールドをおしはらいください」



「初心者の僕から金をむしり取るって言うのか、この守銭奴が。聖職者が聞いて呆れるぜ、ホラよ」




 ちゃりんと銅貨を1枚床に落とす。



「拾えよ」



 神父がわなわなと震えているように見えるけど、多分気のせいだろう。ちゃんと拾ってるし。



「おぉ、かみよ。……この糞、……このもののしんなるじつりょくをわれにあたえたもう」



 ん?何か言ったか?


 神父の手元が一瞬光ったと思ったら、その手には1枚の羊皮紙があった。



「さっさと寄越せ!」



 神父から強引に引ったくり、無言で教会を立ち去る。後ろから黒いオーラを感じたが気のせいだろう。



 どれどれ……。




――――――――――――――――――――


 ヒエンイカルガ


 旅人


 せいべつ:おとこ

 レベル:1

 HP:18

 MP:0


 E:布の服

 E:皮のサンダル


 ちから:4

 すばやさ:7

 たいりょく:4

 かしこさ:8

 うんのよさ:2

 かっこよさ:0

 さいだいHP:18

 さいだいMP:0

 こうげき力:6

 しゅび力:7

 EX:0


 しょうごう:なし


 とくぎ:なし

 じゅもん:なし


――――――――――――――――――――



 しょぼい。

 超しょぼい。


 かっこよさが0って馬鹿にしてんの?

 運営会社の悪意すら感じるわ!



 クソッ、クソッ、糞!


 ……まぁいい。

 これから強くなればいいんだ。


 職業は……旅人?

 初期職だろうか。


 ドラ○エと同じならレベル20で転職も可能なはずだ。さっさとレベルを上げて転職しちまおう。


 しかしレベルを上げるにせよ、戦闘しなきゃならん。今の装備は……武器がない。手持ち40ゴールドで何が買えるか分からんが、とりあえず武器屋に行ってみるか。



 村の中をウロウロしつつ、教会から5分程度の所で剣と盾の看板を見つけた。プレーヤーらしき人間が居ない事を確認しつつ、店内に突入。




 おぉ、武器屋だ……。


 壁に掛けられた様々な武器たち。

 イラストで見たことのあるこんぼうやひのきのぼう、竹やり、銅のつるぎ、聖なるナイフ的なの、くさりがま。


 初期村ラインナップといった感じだけど、なんかやっぱり僕も男の子。武器を見ると胸が熱くなるな。




「ここはぶきやだ。きょうはなんのようだい?」



 トランペットを物欲しげに見る黒人少年さながらに武器を見ていた僕に、髭モジャ野郎が話し掛けてきた。




「買いに来た」



「どれがほしいんだい?」



 ドラ○エだねぇ。


 しかし、AIはどのくらい人間様の言葉に対応しているんだろうか。うん、試してみよう。




「40ゴールドしかないから、これで買えるものを教えろ」



「……40ゴールドなら、ひのきのぼうかこんぼうだな」




 おぉ!結構賢い!




「なら、くさりがまを寄越せ」


「おきゃくさん、おかねがたりないよ」


「いいから、くさりがまを寄越せ」


「おきゃくさん、おかねがたりないよ」




 ほぅ、これはループか。



「チッ、こんぼうを寄越せ」



「これはあんたにはそうびできないが、それでもいいかい?」



 ……は?


 こんぼうって言ったら誰でも装備できる初期武器だろうが!このNPC狂ってんのか?



「ちょっと貸してみろ!」



 ……超重いんですけどー。

 こんなん振り回せる訳ねーよ。

 リアルだ。あまりにリアル。




「ひのきの棒でいい……」



「20ゴールドになるぜ。それでもいいかい?」



「いいも悪いもそれしか無ぇだろうが!」



「ここでそうびしていくかい?」



「はぁ?装備だぁ?ただ手に持つだけのくせに仰々しく言うんじゃねぇよ!」



 ひのきの棒をひったくり、10ゴールド硬貨2枚を髭モジャに投げつける。



「二度と来ねぇからな!」




『ヒエンイカルガはひのきの棒を手に入れた!』




 うるせぇ!


 扉を叩き付けるように閉めて店を出る。

 イライラが止まらない。



 クソッ、やめだヤメ。

 今日は気分が乗らねぇ。


 さっさとログアウトして帰ろう。


 多分ログインしてから5時間は経っているだろう。強制ログアウトを待ってもいいが、あんまり遅くなるとババアに下手な心配をさせてしまうかもしれん。こう見えて実は親想いなんだからな!


 教会へ向かい、ログアウトの手続きを取る。



「……おぉ、まよえるこひつじよ、しんせいなるきょうかいになんのごようかな?」



 なんだコイツ。

 微妙に眉間に皺が寄ってるぞ。

 クソッ、馬鹿にしやがって。




「ログアウトだよ。さっさとしろ、グズが」



「では、めをつぶり、いのりなさい」



 目を瞑り、神父の前で棒立ちになる僕。

 気のせいか一瞬、神父NPCがニヤリと笑ったように見えた。




 ドガッという音と共に後頭部に鈍い痛みを感じた瞬間、僕の意識は――――




『ヒエ――ルガは18のダメージを――。死――しまった』




 うっすらと聞こえるアナウンスを最後にブツリと途切れた。


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