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中学二年生  作者: 多摩屋
ニート編
22/33

第4話


「おぉ、やっともどってきおったか。とりあえず、おちゃくらいだすからそこにすわりなさい」



 ドアを開けると村長が『待ってました』と言わんばかりに真正面に立っていた。



 村長の家は他の民家と変わらず、ログハウスのような丸太小屋だ。かなり小さく、いいとこ四畳半程度だろう。



 村長の中の人に警戒しつつ、ダイニングチェアーに座る。ベッドが無いけど、このじじいどこで寝てるんだ?あ、VRだから寝ないのか。




「ちこくしたことはこんかい、おとがめなしにしてやろう。ほれ、ほうしゅうじゃよ」



 相変わらずの棒読みでテーブルの上に5枚の10円玉みたいな硬貨をじゃらりと広げるじじい。




 なんだこれ。ゲーム内通貨?


 ひょいっと1枚つまみ上げる。






『ちゃちゃちゃちゃっちゃ、ちゃっちゃーん!!』



 突然の大音響に思わず椅子から転げ落ちる。



 その数秒後。



『ヒエンイカルガは50ゴールドを手に入れた!!』





 ……は?

 なんすかコレ。




「あぁ、またボリュームが最大になっておったか。しかもレベルアップ音の設定なのにアイテム取得で鳴らしてどうするんじゃ、まったく。すまんのぅ、今調整するからのぅ」




 おい、じじい。

 棒読みはどうした。


 じじいが耳元のイヤホンを弄りだす。


 やぁん……、らめぇ……。

 耳、弱いんだからん、あふん。




「見た目通り、キモいのぉ」



 余計なお世話だこの野郎!




「困惑しとるようじゃから、説明するかのぅ」




 じじいは呆気に取られている僕を椅子に座らせると、またも長々と説明を始めた。今回の説明は棒読みじゃなかった。




 かい摘まみまーす。


 何の説明もせず、風呂洗いクエストをやらせたのは固定観念無しで、テスター達にこのVR世界を味わってもらう意味があったらしい。


 テスターは今のところ全部で100人程。

 やけに少ない。


 この初期クエストを終わらせれば村長自らがこの世界を説明する決まりになっている。


 耳のイヤホンは特殊アイテムで装着者の行動、状況、変化をお知らせするもの。



 この世界の名はDURACUE。


 「ドラ○ンクエストとは一切関係ありません。何なら向こうがパクりです」とのたまう。


 ゲームシステムは何の偶然か分からないが、ド○ゴンクエストとほぼ同じとの事。はいはい。



 イベントリ、無限バック的な物は無く、普通に自分が持てる量しか持てない。


 ステータスは念じても無駄。

 各村、町、城にある教会にて神父に頼むと神の力を借りて羊皮紙にその人間のステータスを書き写してくれるらしい(有料)。


 五感はそのまま。

 斬られたりしたら死ぬほど痛い。


 死んだら教会で生き返る。

 ゴールドは半分に。

 まぁドラ○エですな。



 三大欲求も普通にある。

 寝なきゃ辛いし、食わなきゃ餓死する。


 エロ行為も可能だが、したら即アカウント削除。常にプレーヤーは監視されているらしい。


 時間の流れも現実と同じ。

 ログインしていられる最大は6時間まで。


 町や村には基本NPCだけだが、管理の問題でたまに中に人を入れることがある。じじいや番頭がそれにあたる。ただし、基本テスター(プレーヤー)にバレてはいけないルールらしく、NPCを演じなければならないらしい。




「ま、だいたいこんなトコじゃな。何か質問はあるか?」



 ……思ってたVRMMOとだいぶ違うんですけど。かなり現実に近い、近すぎる。


 ゲームなんだからさぁ、もう少し便利にしてくんないかなぁ……。



 あと僕以外のテスターを見掛けないんだけど。



「あ、ほ、ほ、かの人は……」



「誰がアホじゃ!この不細工がっ!」




『ヒエンイカルガは3のダメージを受けた!

 ヒエンイカルガは泣きそうになっている』




 うるさいわっ!

 言われ馴れてても地味に傷つくわ!

 



「ちが、ちがます」



「……なんじゃお前、初対面はハキハキ喋ってたのに何でそんなんなっとるんじゃ?」



 引き篭りなめんなよ!

 もう家族とすら3ヵ月以上喋ってないんだからな!

 普通に喋るってどうやってやるんだか完全に忘れたわっ!




「で、何じゃったっけ?他のプレーヤーだったかの?」



 聞こえてんじゃんかよ!


 ぶんぶんと首を縦に振る。



「お前とは別の初期クエストを受けたやつが1人居っての、そろそろ帰ってくるはずなんじゃが……」





 その時、ガタっと扉が開く音がする。



「すまない村長、遅くなってしまったな。おや、こちらの方は?」





 ――――そこに居たのは。



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