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中学二年生  作者: 多摩屋
ニート編
21/33

第3話

 目が覚めると、そこは見知らぬ村でした。


 割りと定番な冒頭をお送りしています。

 ありがとうございます。






 ちょ、ちょ、待て待て。

 まさかまさか、マジでVR世界な訳……?


 頬をつねる。

 うん、痛い。


 って普通痛覚とか遮断するもんなんじゃないの?

 まだそこまで技術が進んでないとか?



 うわー、なら戦闘とかないわー。

 痛いの絶対無理だっての。


 生産寄りの職にするかー。




 って、そんな事より。


 …………VRマジぱねぇ。


 風が頬を撫でる感覚、田舎独特の土の匂い、広がる地平線。



 現実としか思えないっす。

 あは、あはははは。





「こりぃゃぁぁぁ。はたけしごとをさぼってこんなとこにおったのかぁヒエンイカルガ」




 はい?

 こちらの棒読みのじじい、どなた?




「なんじゃ、そんちょうであるワシのことをわすれてしまったかのようなかおをして。しかたないのぉ、ならばせつめいしよう」




 おいおい、なんだこの急展開じじいは。

 



 ハッ。




 チュートリアルイベントか!

 んで、このじじいはNPCか!



 ほへー。


 ちとシナリオは強引すぎるけど、このじじいはAIなのかー。人間にしか見えないのに。




 じじいの話が長いので、かいつまむ。




 ここはクサッツの村。

 村長の名前はクサイ。

 温泉が有名な村らしい。


 一年前に村の入り口で行き倒れていた僕。

 名前以外の記憶がなかった為に仕方なく村長が面倒をみてくれていたらしい。


 そして今日は温泉場の掃除の手伝いを頼んだのに、いつまで経っても来ないと温泉場から連絡を受けたクサイは心配してヒエンイカルガを探していたとの事。



 ふーん。


 てか名前、『ヒエン=イカルガ』なんだけど。イコールが大事なんだぜ?せめてヒエンって呼べや。



 まあ流れに身を任せよう。



「すまない、村長。考え事をしていたら何時の間にかこんな所に来てしまったみたいだ。すぐに温泉場へ行くから場所を教えてくれないか?」




 ふっふっふ、折角のVR世界。

 ロールプレイしてなんぼやろ!




 お、村長がびっくりしてるぞ。

 なんぞ?



「……。このみちをまっすぐいって、つきあたりをひだりじゃよ」




 様子がおかしな臭ぇ村長は放置して、クエスト消化といきますかー。しかし、クエスト受注状況とか分からんじゃないか。念じればステータスとか見られるんかな。




 ステータス!





 …………むーん、駄目だね。




 イベントリ!





 …………これも駄目か。




 おっと、ここを左か。

 あったあった、あれだな。



 温泉場って聞いたから露天風呂かと勝手に思ってたけど、見た目銭湯でした。村にある浴場なので現実の銭湯よりずっと小さいけど。


 銭湯の入口の引き戸を開き、中に入る。



「……ぶ、やっときたなヒエンイカルガ。さっそくだが、よくそうのそうじからはじめてくれ」



 ぶ?


 ……NPCはみんな棒読み&僕のことをフルネームで呼ぶのか。




「遅れてすまない。掃除道具はどこだ?すぐに取り掛かろう」



「ぷ……、もうだしてあるからそのままふろばにむかってくれ」



 こいつ、何か笑ってんだけど。


 まぁいい。さっさと片付けて次のイベントに進もう。


 浴場に入り、スボンを膝までめくり上げる。あ、僕が今着てるのは初期装備っぽい麻のシャツと麻の長ズボン。靴は草履みたいなサンダルだった。



 デッキブラシを拾い上げ、浴槽に入……………ちょっと待て、なんだ今のは。



 嘘だろ、嘘だと言ってくれ。












 目の前を凝視すると、そこには人が立っていた。



 ぽっちゃり体型。


 不細工にきび面。


 死んだ魚のような目。






 鏡に映る田中和男だった。











 はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?




 なんだよ、これ!!

 まんま僕じゃんかよ!


 確かにビジュアル設定とか無かったから、もしかして……なんて思ったけどさぁ!



 僕、このビジュアルで「すまない(キリッ)」とか言ってたの!?




 きぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


 殺して、いっそ殺して!


 生まれてすいません、生まれてすいません。




 え、何もしかして番頭さんが笑ってたのって不細工が二枚目演じてたから?







 ……ナイフ、ナイフ。

 どっかないのか。

 あいつ殺して僕も死ぬ。



 あは、あは、あはははは。









 ――――――5分後。





 ハッ。


 いかん、あまりの現実にトリップしてた。



 でもよくよく考えたらNPCだろ?

 中の人居ないんでしょ?


 だったらいいじゃん。

 セーフセーフ。


 しかしあの番頭NPC、棒読みのくせに感情があるようにも見えたぞ。笑ってやがったし。本当に中の人居ないんだろうなぁ……。



 とにかくクエスト完了を目指し、浴槽を掃除する。汚ねぇなぁ、しかし。



 3分程洗って、番頭NPCの元へ戻る。



「お、もうおわったのか?ならほうしゅうはそんちょうにあずけてあるから、そんちょうからもらってくれ」



 どんな口調で喋ったら良いか分からず、取り敢えず頷くだけにしておく。さっさと報酬を貰いに行こう。



「(なあ、ちょっとお前)」



 うん?

 なんぞ?


 番頭NPCだ。



「(ポケットにイヤホン入ってるはずだから、それ耳に着けな)」



 なんだコイツ。

 すらすら喋るじゃないか。やけに小声だけど。



「(それ着けてないとアナウンスとかサウンドエフェクトが聞こえねぇから、不便だぞ」



 なんのこっちゃ?



「そ、それは、ど、どういう……?」 


 口調、田中和男でお送りすることになりました。

 本当にどうもすみません。




「そ、そんちょうのいえはこのおんせんばのさんげんひだりどなりだぜ」



 はぁ?



「(いいからさっさとイヤホン着けて、村長の所に行け!)」




 これは……どうやら中の人が居るらしい。




 ナイフ、ナイフ。

 こいつ殺して僕も(ry




 恥ずかしさから、そそくさと温泉場を出る。



 しかし、イヤホン?

 そんなもん入ってる訳……入ってた。

 何か補聴器みたいだ。



 取り敢えず装着。


 どこかで聴いたことのあるBGMが流れている。


 ……ドラ○エのBGM?



 なにこのゲーム、パクりなの?

 そういやDURACUEって名前、響きが超似てるし。


 間違いなく訴えられるよ、スク○ニに。


 まぁ僕には関係ないので、訴えられて営業停止処分になるその日まで遊ばせて貰おう。



 しかし、番頭に中の人が居たってことは村長や他のNPC風の人にも中の人が居るのだろうか。



 嫌過ぎる。

 このビジュアルで「キリッ」なんて出来んよ。



 ビジュアル変更ポーション的なのがある事を切に願おう。



 村長の家に到着。


 あぁ……嫌だロールプレイしてなきゃ普通に話すことなんて出来るかっての。


 相手はじじいとはいえ、中の人がじじいとは限らん。あぁ……憂鬱だ。



 村長の家の前で10分程ウロウロしつつ、僕は勇気を振り絞ってドアを開けた。





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