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中学二年生  作者: 多摩屋
ニート編
20/33

第2話

 7Bの部屋に入ると遮光カーテンで窓からの日差しを遮っているようで、部屋の中は薄暗かった。この部屋は一辺が30メートルくらいある四角い部屋で、そこにはゲームセンターに置かれているガン○ムのゲーム(戦場の絆だっけ?)の筐体(きょうたい)に近いものが等間隔に並べられている。




 …………どうしろと?


 誰も案内してくんないんだけど。



 ウロウロと部屋の中を徘徊し、電源が入っているであろう機械を眺める。


 あ、人が寝てる。

 何か頭にヘルメットみたいの被ってるけど、もしやVR世界にダイブ中?









 …………………。






 ふぉぉぉぉぉぁぉぉぁ!

 テンション上がるわぁぁぁぁぁ!


 マジで!?

 マジでVR技術とかあんの!?


 斑鳩飛燕がVR世界で俺無双できる系!?



 目を皿のようにして機械を眺めていると、どこからかアナウンスのようなものが流れてきた。



「ようこそ株式会社Fake Worldへ。DURACUEのテスターとしていらした方はお好きな空いている筐体へ入って頂き、VRダイブ用ギアを頭に装着してお待ち下さい」



 あ、やっぱり普通に会社なんだ。

 いやいや、そんな事よりレッツVR体験!



 空いている筐体を探し、潜り込む。

 中にはリクライニングを全開に倒したような形のソファがあり、その上には何本もコードがついたヘルメットが置いてある。


 ここに寝て、これを被ればいいんだよね。


 いそいそとギア?を被り、腕をお腹の上で組んでソファに横たわる。



 わくわく、テカテカ。

 あ、テカテカはしてないよ。風呂に入ったし。




 まだかなーとそわそわしているとギアからヒーリングミュージック的な音楽と共に女の人の声がしてきた。



「――――あなたはDURACUEの世界の住人として、これから生きることになります。さぁDURACUEでのあなたのお名前を教えて……」




 これはあれか!

 ネット小説とかでよく見る初期設定ってやつか!

 ステータスポイント割り振ったり、ビジュアルを弄ったりするやつだな!



 名前ぇ?

 決まってんだろぉ?



 斑鳩飛燕!

 あ、でも異世界仕様の『ヒエン=イカルガ』の方がいいよな。



 なので、ヒエン=イカルガでお願い!














 ………………。




 おい、どうした機械。

 なぜ何も起きない。





「音声ガ聞キ取レマセン。モウ一度ハッキリト発音シテ下サイ」





 音声入力かよ!

 VR技術あんなら思考認識しろや!

 てか急にロボ声やめい!


 まったく、しゃーねーな。




「ひ、ひえんいか、いかるが」



「『ひひえんいかいかるが』様デ宜シイデスネ?」



 良くねーよ。

 全然違うよ。




「ち、ちが」



「音声ガ聞キ取レマセン。モウ一度ハッキリト発音シテ下サイ。マタ、名前ノ確認ニ関シマシテハ『はい』『いいえ』デオ応エ下サイ」




 んだよ、最初からそう言えよポンコツが。



「いいぇ」



「音声ガ聞キ取レマセン。モウ一度ハッキリト発音シテ下サイ。マタ、名前ノ確認ニ関シマシテハ『はい』『いいえ』デオ応エ下サイ」




 イラッ。

 ちゃんと言っただろうが!


 くそっ。



「ぃいえ」



「音声ガ聞キ取レマセン。モウ一度ハッキリト発音シテ下サイ。マタ、名前ノ確認ニ関シマシテハ『はい』『いいえ』デオ応エ下サイ」




 きぃーーーーーーーーーーーーっ!

 なんざますっ!一体なんなんざますっ!

 スネちゃま、スネちゃまー!!



 くそっ、くそっ、糞ったれぇ!


 いや、落ち着け、落ち着くのだ。



 もう一度だけチャレンジだ。

 意識して普通の人のように喋るんだ!


 神よ、いや悪魔よ!我に力をっ!





「いいえ」





「デハ、再度オ名前ヲオ聞カセ下サイ」





 Yes!!!!!!


 まだだ、まだ終わっちゃいないっ。



 集中しろ、集中だ。

 唱えろ、唱えるんだ!



 ヒエンイカルガ、ヒエンイカルガ

 ヒエンイカルガ、ヒエンイカルガ

 ヒエンウカルガ、ヒエンイカルガ

 ヒエンイカルガ、フエンイカルガ

 ひひえんいかいかるが



 違うっ、そうじゃない!



 ヒエンイカルガ、コエンイカルガ

 コエンザカルガ、コエンザイルガ

 コエンザイムQ10、ヒエンイカルガ

 ヒエンイカルガ、ヒエンイカルガ

 ヒエンイカルガ、ヒエンイカルガ




 おしっ!


 何か途中肌に良さそうな感じになったけど、概ねOK!




「ひえんいかるが」



「『ひえんいかるが』様デ宜シイデスネ?」



「あ、あい」






 ――――愛、それはかけがえのないもの。


 愛なくして人は生きてはいけない。


 そう、人は皆愛を求め彷徨う旅人なんだ。







 またこれかよ。

 しつこいわ。




「ひえんいかるが、ようこそDURACUEへ。では良い旅を――――」





 お、おーーーい!

 「あい」で認識したんかーい!


 パラメータの設定は!?

 ビジュアル設定は!?

 目赤くしたり、白髪にするやつは!?

 ね、ねぇ女顔にしたいんだけどさぁ!




 お姉さんのアナウンスボイスと共にプシューと白い煙が筐体内を包み込む。


 それを嗅いだと思った瞬間、僕の意識は失われてしまった。





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