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中学二年生  作者: 多摩屋
中学生編
16/33

第16話

「わらわは異世界の使者じゃっ」


 ……言ってて虚しい。




 勇者を探す為にこの世界に転生して15年が経った。


 転生の儀式と同時にわらわの魂には勇者の資格がある者を選別出来る『賢眼』が移植され、転生ののちにわらわの生体眼にロードされる事になっていた。


 しかし15年経った今でも『賢眼』の力は発動する気配も無い。



 これらは全てわら……僕の妄想なんだろうか。



 でも転生前の記憶がやけにはっきりと残っているのだ。

 転生前の僕の名前は『シルヴィア』。



 王国の姫であり、最高位の巫女。

 そう、僕は女の子だったのだ。


 転生して15年も普通に生活していれば男の身体にも慣れて、今はまったく違和感ないけど。






 ――――魔族に支配されつつある世界。


 王国は最後の手段を使うことにした。


 力の強い異世界の者をこちらの世界に召喚し、魔族の対抗手段とすることだ。


 実は異世界の者を召喚したのは過去、いくつもあるのだけど、そのどれもが大した効果を得ることが出来なかったらしい。


 元の世界から喚ぶ『異世界召喚』は完全にランダム選択で、力の強い者というこちらの条件がつけられない為、召喚された者は今にも死にそうな老人や家事しか出来ない主婦などの非力な者ばかりだったという。


 それを回避する為にある方法が発案された。



『こちらの世界の人間を異世界に送り、力の強い者を連れてくる』だ。



 物凄く安直だとも思うけど、この頃の王国は相当切羽詰まっていたようで、すぐにそれは実行され、今僕はこの地球という世界に転生している。



 という記憶だけれども。

 正直、馬鹿げていると冷静な僕も居る。



 賢眼? なにそれ美味しいの?

 みたいな。



 あの頃、僕は『元の世界』というものを妄想と思い込み、ただの中学3年生男子として生きていた。


 毎日やることもなく、ただ暇な毎日。


 たまたまネットで見つけたオンラインゲームのキャンペーン広告を見つけ、登録すると見事に当選。


 暇を潰す為に始めたオンラインゲームに予備知識なしでログインすると驚愕の世界が広がっていた。



 ―――――ふぁんたじあーす。


 名前に聞き覚えはないが、この世界観 。

 まさに『わらわの元の世界』。


 開発者が元の世界の住人であることはまず間違いない。


 今まで何度か異世界に旅立ったわらわのような人間が居ることも知っておったし、何より『ふぁんたじあーす』の都市名がわらわの世界とまったく同じじゃったのじゃ。






 おじゃる。


 すまぬ、急に言いたくなった。







 元の世界と酷似した世界観。

 ただのゲーム好き。

 開発者との唯一の接点。


 こんな要素により、わらわは『ふぁんたじあーす』にハマっていった。



 最近では『ふぁんたじあーす』が面白すぎて、またも『元の世界』の事などすっかり忘れてゲームの世界で遊び呆けていると、ある機会に恵まれ僕はキャンペーン当選者だけの組合に入ることになった。


 キャンペーン当選者による『愚痴を言い合う会』って感じで、同じ悩みを共有することにより、僕らは急速に仲良くなった。




 ――――そんなある日。


 僕は勇者候補をリアルで見つけてしまった。



 ゲーム内で仲良くなった『ヒエン』という普人族のキャラクターを使う、いっこ下の男の子。



 リアル話の中から家が近い事が分かり、是非会おうとなった。


 ゲーム内での一人称は『わらわ』だからもしかして僕が女だと勘違いしている可能性もあるけど、まぁその時はその時で。


 そんな感じで軽い気持ちで会いに行くと、そこには人外の美しさをもつ醜男が居た。



 彼のリアルの名前は『田中和男』。


 見た目は通常の美的感覚から言えば不細工の部類に入るであろう醜男。


 しかしわらわの『賢眼』を通すと彼の純真無垢な魂から神々しいまでの美しさが見てとれる。



 正直、わらわのどストライク。



 一目見たときから身体中に電気が走ったかのような錯覚に襲われ、あろうことか恋にも似た感情を抱いてしまった。



 初めて会った日はあまりの美醜に緊張して、ゲームの話しか出来なかった。 し、しかも最後にはこ、告白なんて真似をしてしまったでわないかっ! たわけっ!



 ツンデレはこのくらいにして、その後の話をば。



 なかなか会ってくれないヒエンだったが、何度かアプローチ(ち、違うっ! そ、そう友達としてだからねっ 的な)をしてやっと普通に話が出来るようになれた。


 学校が同じ方向なので3日に一度くらいは一緒のバスに乗ったりして、今ではいい友達だ。 うん。



 ……とはいえ『賢眼』の結果も捨て置けないし、いつかはヒエンをわらわの世界につれて行かなければならない。


 何て言えば分かってもらえるだろう。






 えーい、女は度胸だぁぁぁぁっ!







 …………………………。







「面白い設定ですね」



 違うっ、ヌシの言う『獄天』とか厨二設定の話をしている訳ではないんじゃ!



「そう言われても……じゃあ仮に柴さんがその『シルヴィア』さんだったとして、僕をどうやってその向こうの世界に連れて帰るんです? てか転生して15年も経ってるんですよね? 滅亡してますよ、グランデロン」



 えっとー、そのー、その辺はー


 あ、ほら不思議な力が働いて、15年前のグランデロンに戻っちゃう……みたいな?



「へー」



 飛燕は興味がないようだ。



 ちょ、ちょっと待って今、かんが……思い出すからっ。



「あ、着いた。 じゃ、僕ここで降りるんで」







 ちょ、ちょま……


 す、好きなのぉぉぉぉぉ。













 気を引きたいだけでした(テヘッ)

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