【第9話】 「笑えてる間は、大丈夫」
「リナ〜
ゴメンまたモバ充貸して〜」
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いつも通りのニコニコ笑顔で
こう答える
「しゃーないな〜^_^」
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私、笑うの得意やねん。
昔から。
空気が重かったら、
とりあえず笑えばええ。
相手が安心する顔するのも、
その後に場が回り出すのも、
全部、知ってる。
——それが、今は怖い。
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対戦待機の空間。
白くて、広くて、
何もない場所。
なのに、
胸が詰まる。
(またか……)
スマホを握る手に、
じんわり汗が滲む。
私の設定。
【魅力:+◯◯】
表示されるたびに、
少しだけ吐き気がする。
(これ、私なん?)
勝った。
ちゃんと勝ってる。
相手より上手く振る舞って、
相手より先に折れさせて。
——それだけ。
なのに。
(なんで、こんな……)
⸻
相手の顔を見る。
普通の人。
私と変わらん。
笑ったら、きっと普通に笑う。
(この人……)
(私のせいで、消えるかもしれへん)
その考えが、
頭から離れへん。
⸻
「大丈夫ですよ〜」
自分の声が、
やけに軽く聞こえる。
(あ、今の声)
(めっちゃ“いい感じ”や)
魅力ポイントが、
勝手に仕事してる。
相手の肩が、
少しだけ下がる。
安心してる。
(やめて)
(そんな顔せんといて)
⸻
心臓が、うるさい。
(私、何してるんやろ)
(ゲームやん)
(仮想空間やん)
何回言い聞かせても、
脳が納得せえへん。
⸻
ふと、
別の光景が浮かぶ。
——スマホキャッチ。
皆が固まって、
空気が凍って。
一人だけ、
「余裕やろ」って言ったあいつ。
(……ほんまに、何も考えてへん顔)
あの時。
正直、
腹立った。
(なんで笑えるん)
(なんで平気なん)
でも——
今なら、
少しだけ分かる。
(あれ……)
(ホンマに考えてへんの?)
⸻
私、
考えすぎてる。
減ることも、
壊れることも、
消えることも。
全部、
頭の中で何回も殺してる。
(私の方が……)
(よっぽど、人を殺してる)
⸻
対戦終了。
勝ち。
画面に、
【魅力:+】が浮かぶ。
——もう、増やさんでええ。
そう思った瞬間。
胸の奥が、
ミシッと音を立てた。
(……あ)
(これ以上、無理かも)
⸻
仮想空間が、
静かに解けていく。
戻る前。
視界の端に、
あいつが見えた。
相変わらず、
訳分からん顔。
状況も、
空気も、
全部ズレてる。
なのに。
(……なんでやろ)
(あいつの近くやと)
(ちょっとだけ、息ができる)
⸻
私は、
また笑った。
いつも通り。
誰にも、
バレへんように。
(壊れるなら……)
(もう少し、後にしよう)
そう思いながら。
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