表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

【第9話】 「笑えてる間は、大丈夫」

「リナ〜

ゴメンまたモバ充貸して〜」


______


いつも通りのニコニコ笑顔で

こう答える


「しゃーないな〜^_^」

________



私、笑うの得意やねん。


昔から。


空気が重かったら、

とりあえず笑えばええ。


相手が安心する顔するのも、

その後に場が回り出すのも、

全部、知ってる。


——それが、今は怖い。



対戦待機の空間。


白くて、広くて、

何もない場所。


なのに、

胸が詰まる。


(またか……)


スマホを握る手に、

じんわり汗が滲む。


私の設定。


【魅力:+◯◯】


表示されるたびに、

少しだけ吐き気がする。


(これ、私なん?)


勝った。

ちゃんと勝ってる。


相手より上手く振る舞って、

相手より先に折れさせて。


——それだけ。


なのに。


(なんで、こんな……)



相手の顔を見る。


普通の人。


私と変わらん。

笑ったら、きっと普通に笑う。


(この人……)


(私のせいで、消えるかもしれへん)


その考えが、

頭から離れへん。



「大丈夫ですよ〜」


自分の声が、

やけに軽く聞こえる。


(あ、今の声)


(めっちゃ“いい感じ”や)


魅力ポイントが、

勝手に仕事してる。


相手の肩が、

少しだけ下がる。


安心してる。


(やめて)


(そんな顔せんといて)



心臓が、うるさい。


(私、何してるんやろ)


(ゲームやん)


(仮想空間やん)


何回言い聞かせても、

脳が納得せえへん。



ふと、

別の光景が浮かぶ。


——スマホキャッチ。


皆が固まって、

空気が凍って。


一人だけ、

「余裕やろ」って言ったあいつ。


(……ほんまに、何も考えてへん顔)


あの時。


正直、

腹立った。


(なんで笑えるん)


(なんで平気なん)


でも——


今なら、

少しだけ分かる。


(あれ……)


(ホンマに考えてへんの?)



私、

考えすぎてる。


減ることも、

壊れることも、

消えることも。


全部、

頭の中で何回も殺してる。


(私の方が……)


(よっぽど、人を殺してる)



対戦終了。


勝ち。


画面に、

【魅力:+】が浮かぶ。


——もう、増やさんでええ。


そう思った瞬間。


胸の奥が、

ミシッと音を立てた。


(……あ)


(これ以上、無理かも)



仮想空間が、

静かに解けていく。


戻る前。


視界の端に、

あいつが見えた。


相変わらず、

訳分からん顔。


状況も、

空気も、

全部ズレてる。


なのに。


(……なんでやろ)


(あいつの近くやと)


(ちょっとだけ、息ができる)



私は、

また笑った。


いつも通り。


誰にも、

バレへんように。


(壊れるなら……)


(もう少し、後にしよう)


そう思いながら。


_________





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ