【第7話】スマホキャッチ
静かすぎた。
カウントが終わっても、
誰もすぐには動かなかった。
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「落下高度は任意設定」
「制限時間:5分」
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その瞬間。
敵チームの一人が、
無理やり笑った。
「まぁ、俺らは慣れてるしな」
「ちゃんと計算すれば問題ない」
声が、少し裏返ってる。
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リナが、小さく俺に囁く。
「……ねぇ」
「アンタ、一回も勝ってないよね?」
「ん?せやけど」
「……そう」
それだけ言って、口を閉じた。
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カツヤが、俺の肩を掴む。
強く。
「なぁ……」
「お前、最後な」
「アンカーってこと?」
「……そうや」
目を合わせない。
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ユウタが、震える声で言う。
「高く……落とせるの、
君だけやと思う……」
俺は、笑った。
「まっかせなさい〜」
「キャッチすりゃええだけやん」
「ふわっと投げるから頼むで!」
場を明るくしたつもりが
なぜか、ただの浮いてる奴の空気が漂った。
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敵チーム。
一人が、スマホを持ったまま、
手を震わせている。
「無理だ……」
「こんなん、無理に決まってる……」
「落とせ」
「勝たな意味ないやろ」
「でも——」
揉めてる。
敵チームの中央に立っている男が、
一歩前に出る。
さっきまで余裕ぶってたエリート。
でも今は、
目が泳いでる。
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「……じゃあ、俺が行く」
声が、少し震えてる。
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高さ設定の画面が浮かぶ。
「落下高度:◯m」
指が止まる。
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「……もうちょい下でええやろ」
「いや、これじゃ勝てん」
「でも壊れたら——」
後ろの三人が、
小声で揉め始める。
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俺はそれを見て、
正直ちょっと笑いそうになった。
(なんや、そんなビビるゲームか?)
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結局、
そこそこの高さで確定。
スマホが、
スッと宙に浮く。
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「いくぞ……」
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落ちる。
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下で待つ三人が、
必死で構える。
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——キャッチ。
ギリギリ。
スマホが、
バチッと嫌な音を立てた。
少しだけ画面にヒビ。
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敵チーム全員が、
一斉に息を吐く。
「……助かった」
「マジで焦った」
上から落とした奴は
自分の受験番号を見つけた東大生
ぐらいのテンションで感動してる笑
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でも、
誰も笑ってない。
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次。
また次。
高さは、
ほとんど上がらない。
むしろ、
下がっていく。
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安全第一。
失敗しないことが最優先。
エリートらしい判断。
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——そして。
三人目。
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少し欲が出た。
「このくらいなら……」
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落下。
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キャッチ——
——失敗。
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スマホが、
床に叩きつけられる。
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バキッ。
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画面が、
完全に割れた。
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その瞬間。
敵チームの1人が、
声を失った。
「……あ」
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でも。
何も起こらない。
ただ
スマホが壊れた音が響き渡る
他にもナニカが壊れた音
が
俺だけには
聞こえなかった。
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仮想空間だから。
何も起こらない。
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俺は思わず言った。
「残念やなぁードンマイドンマイ〜
仮想空間で良かったなぁ〜」
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——空気が凍る。
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敵チーム全員が、
俺を見る。
さっきまでのエリートの顔じゃない。
化け物でも見るかのような
視線が俺に刺さる
「え?!
俺なんかマズイ事ゆった?」
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「……お前.もしかして」
「⚪︎⚪︎⚪︎〜〜#/&&/&&''」
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俺は首をかしげた。
「?」
何かを必死に伝えてきたが
俺には
理解できなかった。
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結果表示。
敵チーム合計距離。
——低い。
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次は、
俺たち。
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リナが前に出る。
でも、
高さを見た瞬間に手が止まる。
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カツヤが、
静かに言う。
「……無理すんな」
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ユウタは、
スマホを胸に抱えてる。
完全に守りの姿勢。
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リナは、
最低限の高さに設定した。
落下。
——成功。
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ユウタも同じ。
成功。
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カツヤ。
一瞬だけ迷って、
少しだけ上げる。
——成功。
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でも、
距離は足りない。
明らかに。
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残るは、
俺。
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自然な流れで、
アンカー。
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三人が、
同時に俺を見る。
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リナが言う。
「……あんたなら、行ける」
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カツヤは、
目を逸らしたまま。
「お前しか、、、頼む」
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ユウタは、
小さく頷く。
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高さ設定画面。
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俺は、
思い切りスライドさせた。
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「えっ——!?」
敵チームが、
声を上げる。
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リナが叫ぶ。
「ちょっ……!?」
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カツヤが、
低く唸る。
「……アホか」
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高さ。
ぶっちぎり。
今までの合計を、
一人で超える数字。
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俺は、
笑ってた。
「余裕やろ、これ」
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スマホが、
浮く。
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異様な静けさ。
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落下。
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——長い。
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下で待つ三人が、
必死で手を伸ばす。
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——キャッチ。
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一瞬、
間があって。
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——成功。
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空間が、
揺れた。
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結果表示。
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俺たちの勝ち。
圧勝。
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俺は、
ガッツポーズした。
「ほらな!」
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——誰も喜ばない。
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リナは、
顔を伏せてる。
ユウタは、
震えてる。
カツヤは、
歯を食いしばってる。
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敵チームは、
完全に青ざめてる。
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各自勝利報酬の表示が出る。
俺のスマホの表示は「自分設定機能:解放」
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敵チームの一人が、
俺に向かって
叫ぶ。
「やめろ!!」
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遅い。
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敵の声は俺には聞こえず
仮想空間から
敵チームが消えた。
いや現実世界に戻ったのか
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——プツ。
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敵チームが消えると同時に
俺のスマホもブラックアウト
バッテリー切れ
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消える前に初めて見る、
赤色の警告表示。
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「※自分設定機能使用中の端末破損は——」
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文字が、
途中で消えた。
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最後まで
見えなかった。
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俺は、
まだ分かってない。
「……あれ?」
「くっそまたバッテリー切れかよ〜」
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三人の方に、
顔を向ける。
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リナの目に、
涙。
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カツヤが、
震える声で言う。
「……お前」
「これからやぞ」
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ユウタが、
呟く。
「もう逃げれない……」
「……」
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空間が、
静かに崩れ始める。
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俺は、
まだ理解できてない。
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でも。
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皆の最後の顔が明らかに勝利の顔ではなかった
俺の知らない所で
何かとんでもない事が
起こっている事だけは理解できた。
⸻
——つづく。




