【69話】レッスン3
休憩中。
⸻
店長のスマホが、
ふと目に入った。
⸻
(……あ)
(あのゲーム)
⸻
パズル系。
俺も、
前ちょっとだけやってたやつ。
⸻
(……いけるか)
⸻
一歩、近づく。
⸻
カツヤの声が、頭をよぎる。
(嘘はつくなよ)
⸻
「……それ」
「店長も、やってるんですね」
⸻
店長、
ちらっとこっちを見る。
⸻
「ん?」
⸻
「俺も前」
「結構やってました」
⸻
一瞬。沈黙。
⸻
(……あかんか)
⸻
「もう今は」
店長が言う。
「やってないの?」
⸻
「……あー」
⸻
「またやろうかなって」
⸻
「最近」
「どんなキャラいるんですか?」
⸻
自分でも分かる。
何も狙ってない。
ただ、
普通に気になっただけ。
⸻
店長。
「あー」
「今はこのキャラが強いですね」
⸻
スマホを、
少しだけ傾ける。
⸻
「えー!」
「今そんなのいるんですか!」
⸻
「ちょっと帰って
ダウンロードして、ガチャ回してみます!」
⸻
「そんな簡単には」
「当たらんでー」
⸻
笑。
⸻
「あ、じゃあ」
「俺、先帰ります」
⸻
「お疲れ様でした〜」
⸻
「……お疲れ様でした」
⸻
声が、
少しだけ柔らかい。
⸻
(……あれ)
⸻
目線。
⸻
昨日より、
マシな気がした。
⸻
⸻
帰り道。
⸻
(……ダウンロードしよ)
⸻
⸻
次の日。
⸻
仕込み中。
⸻
店長が、
ぼそっと言う。
⸻
「……で」
⸻
「結局」
「ガチャ引いた?」
⸻
「……引きました」
⸻
「でも」
「全然アカンくて」
⸻
「ちょっと」
「課金しそうになりました」
⸻
「そーなん」
⸻
「ええやん」
「バイト代で課金したら」
⸻
笑。
⸻
「いや」
⸻
「それは」
「生活費が……」
⸻
「はは」
⸻
一瞬。
⸻
(ん?これって
(……普通に
(しゃべれてない?)
⸻
ガチャの話。
それだけ。
⸻
でも。
⸻
あの重たい空気が、
ない。
⸻
(……これか?)
⸻
(ちょっとだけ、軽く)
⸻
⸻
その日の夜。
⸻
河原。
⸻
「聞いてくれ!!」
⸻
俺は、
一気に話した。
⸻
「今日な!」
「店長が!」
「ゲームの話してくれて!」
⸻
「普通に!」
「普通に喋れてん!!」
⸻
カツヤ。
⸻
手を上げる。
⸻
「ストーップ」
⸻
「調子乗るな」
⸻
「……え?」
⸻
「それな」
⸻
「店長とだけ」
「ええ感じになっとるだけや」
⸻
「それ」
「周りからはただの媚び売りに
見える可能性もある」
⸻
胸に、
軽く刺さる。
⸻
「次や」
⸻
「バイトの同僚」
「全員とや」
⸻
「……全員?」
⸻
「そや」
「じわじわでええ」
⸻
「全員と」
「いい関係性作れ」
⸻
「なんでか分かるか?」
⸻
俺、
首を振る。
⸻
「使えん空気ってな」
「伝染するねん」
⸻
「でもな」
⸻
「こいつ」
「ちょっとええ奴かも」
⸻
「って空気も」
⸻
「同じように伝染する」
⸻
間。
⸻
「せやから」
「全員や」
⸻
「わかった?」
⸻
俺は、
ゆっくり頷いた。
⸻
足元を見る。
⸻
【使えない】
⸻
まだある。
⸻
でも。
⸻
さっきより、
少しだけ。
⸻
影が、
薄い。
⸻
——つづく。




