【67話】レッスン1
「奢れ」
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「……え?」
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「ファミレス行くぞ」
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「え、俺のバイト先?」
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「もちろんや」
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「いや、ちょっと気まずいんですけど……」
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「ほな別の店でもええわ」
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「大事なんは、そこちゃう」
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「……てか」
俺は小声で言う。
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「俺の奢り?」
「バイト代、まだ入ってなくて、、、」
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カツヤ、
少し考えてから。
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「しゃーないなぁ」
「これも借り、な」
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ドアが開く。
ピロピロピーん。
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店内。奥の席。
適当に注文。
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カツヤは、メニューを閉じる。
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「よし、じゃあまず」
「何から行こかな」
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少し間。
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「お前、
「記憶力、ええ方か?」
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「……悪くはないかな、?」
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「ほな決まりや」
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カツヤ、
指を一本立てる。
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「仕事覚える前に」
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「バイト先の人の名前と役職」
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「全部、丸暗記や」
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「……え?」
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「仕事より先に?」
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「当たり前やろ」
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「誰も新人に」
「最初から仕事早く覚えろなんて」
「思ってへん」
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「それよりや」
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「一番見られとるのは」
「関係性や」
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「第一」
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「お前」
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「仕事覚える前に」
「もう【使えない】貼られとるやんけ」
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俺、
何も言えん。
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「せやからまず」
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「名前や」
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「一日に」
「何回も」
「名前で呼べ」
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「質問する時も」
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「〇〇さん、これって〜」
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「とにかく」
「名前、付けろ」
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「……それに」
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「なんの意味が……」
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カツヤ、
即。
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「考えんでええ」
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「お前に」
「まだ考える資格ない」
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「とりあえず」
「やっとけ」
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「……はい」
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少し間。
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「んでな」
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「次」
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「今、一番近い存在」
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「教えてくれとる人」
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「店長でもええ」
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「その人の」
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「好きなもん」
「興味ある事」
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「一個、見つけろ」
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「……え?」
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「ちょっと待って!」
「俺、仕事できる奴にはなりたいけど」
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「店長と仲良くなりたいとか」
「思ってないねんけど、」
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カツヤ、
ゆっくり首を振る。
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「ちゃうねん」
「お前そもそも
基本がズレとる」
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「仲良くする必要はない」
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「ただな」
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「同じ場所で働く存在として」
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「仕事できるかどうかより」
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「こいつとおったら」
「なんか楽やな」
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「って思わせたら」
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「勝ちや」
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俺、
黙る。
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「プライベートで」
「仲良くする必要もない」
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「仕事中だけでええ」
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「空気を」
「ちょっと楽にできたら」
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「それで十分や」
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料理が来る。
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カツヤ、
一口食ってから。
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「まぁ」
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「あんま一気に言うても」
「どうせ出来へんやろ」
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「せやから宿題な」
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指を二本立てる。
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「一つ」
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「名前を全部覚える」
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「二つ」
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「誰でもええ」
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「相手の好きな事」
「興味ある事」
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「一個、見つけろ」
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「これ出来たら」
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「次、教えたる」
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俺は、
箸を持ったまま固まる。
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(……それだけ?)
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でも。
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足元の【使えない】が、
少しだけ。
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ほんの少しだけ。
ピクッと動いた気がした。
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——つづく。




