【63話】お前やったんか
4章・滲み編
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帰り道。
横断歩道。
信号が、
チカチカしていた。
(……)
なぜか、
目を凝らした。
理由はない。
ただ、
なんか引っかかった。
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横断歩道の下。
影。
信号の影にしては、
濃い。
動いていないのに、
存在感だけある。
(あ)
(あいつ)
(は?
(ちょっと待てよ
ここ現実世界やんな?)
(なんでモンスターおんねん)
精神病院の白い天井が頭をよぎる
(ん〜、まぁそんな事もあるか?)
(ん?あるんか?!)
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青。チカチカ
急足で人が渡る。
そのたびに、
影が少しだけ濃くなる。
(……)
「あれポイント、
吸い取っとるやろ」
思わず、
小さく呟いた。
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.....
....
「まぁ、えーか」
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その日は、
何もしなかった。
普通に帰った。
気づいてないふり。
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——深夜。
人通りは、
ほぼゼロ。
信号の音だけが、
カチ、カチと鳴っている。
俺はなぜか、
横断歩道の前に立った。
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青。
チカチカ。
(よし)
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少し早足。
渡る——
……と見せかけて、
止まる。
渡らない。
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信号、赤。
影が、
ピクッと動いた。
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次。
また青。
チカチカ。
今度は、
もう少し前まで出る。
でも、
渡らない。
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赤。
影が、
ジタッと揺れる。
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三回目。
四回目。
五回目。
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影が、
明らかに落ち着きがなくなる。
吸えない。
溜まらない。
イライラが、
そのまま形になっている。
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青。
チカチカ。
俺は、
完全に横断歩道の真ん中まで出た。
……止まる。
渡らない。
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次の瞬間。
影が、
ぐにゃっと歪んで——
そのまま、
消えた。
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……終わり。
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俺は、
普通に赤を待って、
青で渡った。
今度は、
何も起きない。
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スマホを見る。
通知、なし。
ポイント、なし。
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「……」
「勝ちでええよな?」
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答えはない。
でも。
信号は、
ただの信号に戻っていた。
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俺は、
歩き出す。
今日も、
普通の日や。
⸻
——つづく。




