【61話】 最後の運動
【61話】 運動・最終日
いつも通りの夕方。
パチンコ屋の前で、
オッサンを待つ。
少し遅れて、
少し疲れた顔で出てきた。
「よっ」
それだけ。
⸻
「なぁ」
異世界に入ると、
オッサンが言った。
「今日で運動、最後やな」
「……え?」
俺は足を止めた。
「なんでなん?」
オッサンは笑う。
「まぁ、見とったら分かるわ」
「えー……」
「なんでやねん」
「もっと色々教えてくれよ!」
「頼むわ!!」
オッサンは頭をかいた。
「いや、俺もな」
「別に終わらしたい訳ちゃうねん」
「まぁ……しゃーないねん」
「なんやねんそれ!!」
「意味分からんわ!!」
⸻
いつも通り、
ランダムマップ。
いつも通り、
殺伐とした空気。
いつも通り、
モンスターが出てくる。
オッサンは、
いつも通り喰らう。
ドン。
俺は、
いつも通り避ける。
QRコードは——
やっぱり取れない。
固まる。
固まらない。
プチュン。
プチュンしない。
それでも、
3体、4体。
倒した。
⸻
「よーし」
オッサンが言った。
「もうええで」
「……え?」
「出てきてええで〜」
⸻
背後。
影。
一瞬で、
身体が強張った。
見覚えのある顔。
ミサキ。
頭の中で、
フラッシュバック。
視界が揺れる。
息が、
うまく吸えない。
「あら〜」
ミサキが笑う。
「やっぱ気づいてた?」
「流石〜」
「只者じゃないとは思ってたけど」
「ちゃんと、気づいてたのね〜」
オッサンが肩をすくめる。
「そらなぁ」
「そんだけ殺意バリバリ出しとったら」
「気づくやろ」
⸻
ミサキのスマホが光る。
【エグるナイフ】
嫌な予感しかしない。
オッサンは、
いつも通りスマホを連打する。
指が、
見えない。
ミサキが近づく。
「おっさん!!」
俺は叫んだ。
「そいつはヤバい!!」
「絶対避けろ!!」
足が、
動かない。
「倒せ!!」
「おっさん!!」
⸻
「おっ」
オッサンが笑った。
「今日は調子ええなぁ」
プチュン。
止まる。
止まらない。
プチュン。
間に合わない。
⸻
ズブリ。
ミサキのナイフが、
オッサンの腹をえぐった。
「……ぅ、ぐぁ」
「あー……」
「こりゃ、痛ぇわ」
「おっさん!!」
俺は叫ぶ。
「倒せるやろ!!」
「一撃やろ!!」
「倒してくれ!!」
⸻
オッサンは、
血を吐きながら笑った。
「だから……」
「朝、言うたやろ」
「今日が最後やって」
⸻
「俺な」
「これだけは決めとんねん」
「どんだけクズでもええ」
「逃げてもええ」
「金借りてもええ」
「人騙してもええ」
「でもな」
「女だけは、殴らん」
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「せやから」
「今日が最後や」
「最近な」
「結構、おもろかったで〜」
⸻
グサッ。
ナイフが、
何度も突き立てられる。
オッサンの身体が、
崩れていく。
チリになって、
消えていく。
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「……あ」
最後に、
オッサンの声。
「そのボタンな」
「お前に、やるわぁ……」
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プッシュボタンが、
俺の手に残った。
⸻
ミサキが、
近づいてくる。
俺の足は、
まだ動かない。
耳元で、
囁かれる。
「まだ壊れてないの?」
「変な人」
⸻
——プチュン。
頭の中で、
音がした。
思考が、
完全に止まる。
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目の前が真っ暗になった。
⸻
——つづく。




