【60話】なんなんその間
今日も、
いつも通りランダムマップに飛んだ。
見慣れた異世界。
見慣れた空気。
そして——
少し前を歩く、
サンダルのおっさんの背中。
じょり、じょり。
「……」
ふと、思う。
なんだかんだ、
このオッサン、めっちゃ師匠やん。
教え方は雑。
説明もしない。
頼りになったり、ならんかったり。
お金貸してって言われる頻度は、
まぁまぁ高い。
でも。
なんだかんだ、
結構一緒におる。
⸻
ギィ……。
どこからともなく、
嫌な音。
モンスターが現れる。
相変わらずのタイミング。
相変わらずの距離感。
オッサンは——
相変わらず、パンチを喰らう。
ドン。
「だからぁ!!」
俺は思わず叫んだ。
「避けれるんやったら
避けろよ!!」
オッサンは笑いながら言う。
「いやまぁ、しゃーないねん」
「これはもう、
どうしようもないからなぁ」
「なんでやねん!!」
⸻
その間にも、
モンスターはこっちに向かってくる。
フィッ。
俺は、
ギリギリで避けた。
身体が、
勝手に動いた。
スマホを構える。
QRコード——
……見つからん。
そもそも。
モンスターごとに、
QRコードの位置がバラバラすぎる。
「どこやねん……!」
避ける。
かわす。
一発、
イカつめのダメージをもらう。
「ぐっ……」
⸻
その瞬間。
プチュン。
小さな音。
モンスターが、
一瞬だけ固まった。
——次の瞬間。
モンスターの背後から、
オッサンの腕が突き出る。
俺の目の前で、止まる。
「うわっ!!」
「いやぁ〜
今のは中々危なかったなぁ」
「いやオッサンの拳の方が
危なかったわ!!」
モンスターは、
そのまま霧になった。
⸻
気づけば。
俺は、
モンスターの攻撃を
そこそこ避けれていた。
完璧ではない。
何発か、
普通に喰う。
でも。
前より、
逃げてない。
⸻
ふと、疑問が湧く。
「なぁ」
「オッサンってさ」
「めっちゃポイント持ってるんちゃうん?」
「なんか使ってるん?」
オッサンは、
当然みたいな顔で言った。
「ん?」
「そんなん、
聞かんでも分かるやろ?」
「いや分からんやろ」
「もちろん……」
少し間。
「ガチャや」
「……やっぱりか」
「それは聞かんでも
分かった気するわ」
⸻
「お、ちょうどええな」
オッサンがスマホを見る。
「5000、貯まっとる」
「ちょっと見とけよ」
おもむろに、
スマホを操作。
ガチャ画面。
謎のコマンド。
【プレミアムガチャ
5000ポイント】
「え?」
「今のコマンドなに?」
「それはええねん」
「よっし、いくぞ」
「そりゃ!!」
⸻
キィィン——!!
ピカーッ!!
青白い雷が、
スマホの周りで弾ける。
バチバチィ……。
【理を砕く剣】
この剣に不可能はない
武器セレクト
この武器にしますか?
⸻
「えっ」
「めっちゃええ武器やん!!」
「絶対ヤバいやつやん!!」
オッサンは、
一瞬も迷わず——
ピッ。
元の武器を選択。
⸻
「はぁぁぁぁ!!?」
「なにしとんねんお前ぇ!!」
オッサンは、
少し考えてから言った。
「ん〜」
「色がなぁ」
「あと名前がなぁ」
「……」
「プッシュボタンの方が
かっこええやろ?」
⸻
俺は、
思わず殴っていた。
今までで一番、
フン!!って感じのパンチ。
ドン。
「いやぁ」
オッサンは笑う。
「そのうち、
お前にも分かるって」
「絶対分からんわ!!」
⸻
二人で、
空を見上げる。
意味は分からん。
でも。
この意味分からん感じが、
いつの間にか
俺の“普通”になっていた。
⸻
「なぁ、オッサン」
「そういえばさ」
「オッサンって、
名前なんなん?」
、.......
「仁や」
……
……
「あ」
「ヒトシな」
なんなん、その間。
⸻
——つづく。




