【55話】 間食
少し時間が遡る
朝。
目は、普通に覚めた。
アラームも鳴ってないのに、
身体だけが先に起きる。
病院の朝は、
考える前に動かされる。
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廊下に出た瞬間、
違和感があった。
人が多い。
わらわらと、
明らかに用もないのに集まっている。
「……なんや?」
皆の視線の先。
ショーヘイの部屋。
その机の上に——
ポツンと置かれた、
一袋のお菓子。
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「そんなばかな……」
「ありえない」
「……あのショーヘイさんが?」
ざわざわ。
誰かが、
マジな声で言った。
「異世界が……終わる……」
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そこへ、キョウコが現れる。
「皆、落ち着いて」
一声で、空気が締まる。
「これはショーヘイさんのものじゃないわ」
一瞬で、
不安が確信に変わる。
「緊急事態よ」
「この病院内に、
侵入者、もしくは裏切り者がいる可能性がある」
「警報を鳴らして。
カメラ、痕跡、ログ。
全ての記録を確認して」
(ぃやいや!!
普通にショーヘイちゃうんか?)
⸻
パソコンの前。
カタカタ、カタカタ。
皆が、
真剣な顔で調べている。
たった一袋のお菓子のせいで。
「監視カメラ、異常なしです」
「ログも問題ありません」
「侵入経路、不明」
詰所の空気が、
どんどん重くなっていく。
⸻
その時。
「キョウコさん!!
出ました!!」
看護師Aが声を上げた。
「一番可能性が高いのは……
このモンスターです」
画面に映る名前。
モンスター『空気』
「ただの空気。
特に何もしません」
「でも、人がいると——
その場の空気が、
重くなったり、軽くなったりします」
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……え?
俺の横から、
声が聞こえた気がした。
(えー、俺?!
ぜんっぜん濡れ衣やわ!!)
気のせいかもしれない。
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キョウコが、静かに頷く。
「……よし」
「処刑するわ」
「皆を集めなさい」
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人が集まる。
「皆、真犯人が見つかりました」
キョウコが言う。
「モンスター『空気』です」
「この部屋、
確かに空気が重かったでしょう?」
「朝から、
このデスクの周りだけ」
(いや、それは
お前らが重くしたんやん)
心の中で、
軽くツッコむ。
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キョウコが、スマホを構える。
「というわけで——」
「こいつを処刑するわ」
針が、空気を切る。
シュッ。
シュッ。
カラン。
カラーン。
刺さるものは何もなく、
針だけが床に落ちる。
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「……処刑、完了」
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誰かが息をついた。
「あ……
なんか空気、軽くなりましたね」
「ほんとだ……」
皆が、少しだけ笑う。
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その時。
ガチャ。
扉が開く。
「皆、どうしたんですか?
こんな所に集まって」
ショーヘイが、帰ってきた。
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キョウコ、即答。
「侵入者がいましたが、
もう始末しました!!」
「そうですか」
ショーヘイは机を見る。
お菓子袋。
「あ、
最後の一粒、まだ残ってますね。」
「失礼、いただきます。」
パクッ。
そのまま、
ゴミ箱へ。
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皆の目が、点になる。
……そして。
また一段と、
空気が重くなった気がした。
〜次回、【普通の話】




