【51話】パシャ
異世界のある本部。
そこには、
モンスターを人に治すためだけに
人生を捧げた組織があった。
名を——
「にゅるり」
周囲から、そう呼ばれている。
構成人数、およそ七百名。
異世界でも最大規模の組織だ。
その頂点に立つ存在は、
敬意を込めて、こう呼ばれる。
——治しびと。
⸻
白い部屋。
白いデスク。
ショーヘイは、
静かに考えていた。
(……なぜ、
あいつは何もしてこなかった)
いや。
(あえて、
私の攻撃を受けた……?)
分からない。
(弱い……?)
——いや、違う。
そんなはずはない。
私の勘が。
私の認識が。
人の“強さ”を、
見間違うはずがない。
(……ダメだ)
考えれば考えるほど、
分からなくなる。
その時。
パァン!!
ドアが勢いよく開いた。
「ショーヘイさん!!
〇〇地区でモンスター発生!
規模、《複雑骨折》です!!
向かいますか!」
ショーヘイは、
迷わず立ち上がった。
「はい。向かいましょう」
眼鏡を、くいっと直す。
颯爽と歩き出しながら、
一言だけ告げる。
「キョウコさん」
「はい!」
「あなたは、
彼を頼みます」
「……かしこまりました」
⸻
_____
数時間後。
「……ん?」
目を開ける。
白い天井。
白いベッド。
(……この光景、
最近多ない?)
でも、
ここは知らない場所。
横を見る。
冷たい目で、
カルテをめくる女。
キョウコだ、
「……ここは?」
「そうね。
病院みたいなものよ」
「病院?
じゃあ、
さっきのアイツ先生?」
____
「違うわ」
キョウコは、
淡々と言う。
「彼——
ショーヘイさんは
治し人よ」
___
___
「ふーん。
まぁそれはええわ」
主人公は、
体を起こした。
「あのさ!!
俺、ショーヘイさんに
修行つけてほしいねんけど!!」
即答。
「無理ね」
「えー!!
絶対俺の師匠やのに!!」
「諦めなさい」
キョウコは、
カルテから目を離さない。
「あなたの情報、
さっき軽く見たけど……」
.......
....
「正直、
足手まといよ」
「いや!!
だから修行するんやん!!」
「無理ですね」
「もっかい頼んでくれへん!?」
「無理です」
間髪入れない。
主人公、
しばらく黙って——
「……なら!!
ちょっと俺の武器見てよ!!」
「……」
一瞬、
キョウコの脳裏に
ショーヘイの顔が浮かぶ。
——彼を頼みます。
「……分かりました」
「武器の確認だけです」
主人公、
胸を張る。
「これです」
差し出されたのは——
スマホ。
しかも、
画面が割れている。
「……スマホ?」
「俺スマホ二個持ちで」
「こっちの壊れた方が武器です」
「QRコード見て
敵の情報見れたりします」
「ただ時間かかるし、
戦闘中は無理です」
「近づかないと
撮れません」
沈黙。
「……それは、
使えませんね」
キョウコは、
はっきり言った。
「モンスターとの戦闘は
命の取り合いです」
「そんな状況で、
誰がスマホ構えて
カメラなんて向けるの?」
「死んで、終わりです」
「で、その情報も
大した事ないんでしょう?」
「いや、
それは見てみないと——」
「……」
キョウコは、
少し考えてから言った。
「そのQRコード、
私にも付いてるの?」
「え?
多分……」
主人公、
首を傾げる。
「俺には付いてたんで。
多分、かかとの裏に」
「……かかとの裏?」
「まぁいいわ。
撮ってみなさい」
「それで私の情報が
どう見えるか確認する」
「使えそうなら、
ショーヘイさんに
お願いしてあげる」
キョウコは、
かかとを見せる。
——ない。
「……?」
「反対もいいですか?」
「……めんどくさいわね」
ない。
主人公、
首を傾げる。
「おかしいなぁ……」
その時。
キョウコが
少しかがんだ瞬間——
衣服の影。
黒い影。
「あ!!
ここや!!」
反射的に。
パシャ!!
——間。
キョウコの目が、
一瞬で凍る。
次の瞬間。
スパァン!!
喉に、
何本もの針。
何が起きたか
分からない。
力が抜ける。
(あ、俺——)
死んだわ。
⸻
つづく。




