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【50話】 ツボ

正直、

何をしたら強くなるのか分からなかった。


だから——

分かりそうな事を、全部やってみることにした。



枯葉、落ち葉を集めて

体にくっつける

沼に寝そべる、

自然と同化してみる



多分違う、次



走りながら動画再生。


画面が揺れて、

酔って、

三歩でやめた。




スマホのカメラに、

意味分からん改造で

望遠鏡みたいなやつを無理やり付ける。


遠くの建物。

崖の向こう。

モンスターの影。


「……これで

 QR、取れへんかな」


当然、無理やった。


ぁー


なんかちゃうな



「修行って、

 もっとこう……

 カッコいい感じちゃうんか」


誰に言うでもなく、

愚痴る。


でもこの世界、

普通の事やっても

普通に死ぬだけや。


せやから——

意味分からん事の方が、

案外正解やったりする。



その時。


遠くで、

黒いのが動いた。


思わず、望遠鏡を

スマホから剥し、

しっかり覗き込む



巨大な黒い影


その正面に

白い服の人間が一人。

武器は持ってない。


対して黒い影は、

見ただけで分かる。


——強い。


デカい。

硬そう。

絶対、近づきたくないタイプのモンスター。


「うわ……」


あの人、

死ぬんちゃうか。


そう思った瞬間。


白い人は、

ゆっくり近づいて——

殴らない。

斬らない。

魔法も使わない。


ただ、

指を当てた。


ポン。

ポン。

ポン。


指一本で、

三回。


モンスターの動きが、

止まる。


……いや、

止まったんちゃう。


緩んだ。


表情が、

ふっと崩れて——


「……ありがとぉ〜」


そんな間の抜けた声を残して、

モンスターは

砂みたいに消えた。


「……え?」


俺の口から、

間抜けな声が出る。


倒したんか?

今の。


いや、

攻撃してへんやろ。


武器も、

スキルも、

何も。


ただ——

触ってただけや。



その白い人が、

こちらを振り向いた。


一瞬、

記憶が繋がる。


「あ」


脳内で、

パズルが完成する音がした。


「……横断歩道のヤバい奴や」


現実世界。

めっちゃ深読みしてきた怖い奴


たしか



「……ショーヘイ」


思わず、

名前が出た。


「え、

 あいつ……

 プレイヤーやったんか」


そらそうか。


普通の人が、

あんな立ち方する訳ない。



改めて見る。


武器、なし。

防具、なし。

でも、立ち姿が

異様に落ち着いてる。


——最強や。


直感で、

そう思った。


そして同時に、

確信した。


「……俺と同じタイプや」


力で押すんちゃう。

技で圧倒するんでもない。


この世界の

“ズレ”を突くタイプや。


思わず叫んだ


「俺の師匠や!!」


_____


もう少し観察してると


いつのまにか人がいっぱいおる、


正確には——

白い人の周り。


「……多いな?」


気づいた時には、

白い人の背後、

左右、

斜め後ろ。


ぞろぞろと、

人影が増えていた。


統一された白、

あとちょっとグレー、黒いのもいる。


ただ全員、

妙に立ち方が似ている。

シュッとしてる。


「部下……?」


あいつ、

お偉いさんなんか。


気になって、

さらに望遠鏡を覗く。


その瞬間。


白い人が、

こちらを見た。


「……え?」


次の瞬間——


ポン。


地面を、

軽く押しただけ。


それだけで。


ズズズズ……。


「うわ!?ちょ、待っ——」


足元の地面が、

生き物みたいに動き出す。


抵抗する間もなく、

俺はズルズルと

引きずられて——


気づいた時には、

白い人の目の前やった。


「……最悪や」


情けない格好で、

地面に転がる俺。


周囲から、

一斉に視線が突き刺さる。


部下らしき連中が、

一歩前に出る。


明らかに、

警戒している。


その時。


白い人が、

ぼそっと言った。


「……あなたですか」


空気が、

一段重くなる。



部下が次々と武器を出していく。



「やめなさい」


白い人が、

部下達を制する。


「あなた達では、

 相手になりません」


 続けてこちらを見ながら



「流石のあなたでも、

 この人数には——」



「いや」


被せるように、

白い人。


「もう既に、

 私達まとめて

 始末できると...」


一瞬、

沈黙。


「……そんな領域まで

 来たのですね」


——いやいやいや。


(なんか、

 まためっちゃ深読みしだしてるやん)


俺は慌てて口を開く。


「ち、違うんです!!」


「俺は——」


白い人が、

静かに言う。


「知ってますよ」


「あなたでしょう」


「1《ワン》を倒したの」


「いや!!

 あれは!!」


「たまたま!!

 ほんの偶然で!!」


(なんでその情報だけ

 知っとるねんこの人!!)


「あの!!俺、

 しっ……」


噛んだ。


「しょー……」


白い人が、

首を傾げる。


「……しね?

 しょーへい?」


「ちゃうわ!!」


(あかん、

 コイツ話ならんすぎる!!)


完全に詰んだ。


その瞬間。


「では」


白い人が、

一歩近づく。


「いきますよ」


「え、

 何を——」


ズボ。


指が、

脇腹に入った。


「——っ!?」


力は、

一切入ってない。


なのに。


「ぁあ〜……」


勝手に声が出る。


「なに……

 これぇいぃ……」


全身の力が抜けて、

膝から崩れ落ちた。


周囲が、

ざわつく。


白い人は、

淡々と告げた。


「大丈夫です」


「この人、

 敵ではありません」


——


……俺、

修行頼みに来ただけやのに。


〜第3章〜つづく

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