【47話】 俺も欲しい
街へ向かう道は、
思っていたより静かだった。
風の音と、
靴が砂を踏む音だけ。
さっきまでの出来事が、
嘘みたいに遠い。
「……なぁ」
俺が口を開きかけた、その時。
——カチャ。
乾いた音。
金属が、
何かに触れた音。
カツヤが、ピタッと止まる。
荒野の風が、止まった。
「おもらし君は……
下がっとけ」
カツヤの声が、低くなる。
「おい、その名前は
やめろよ、絶対ゆうな」
といいつつ
俺は反射的に、
一歩、二歩、後ろに下がった。
カツヤはスマホを取り出す。
画面に、
見たことのないアイコンが表示された。
——タップ。
光。
それだけで、
空気が変わった。
眩しいとか、
そういう次元じゃない。
「……出ろ」
短く言う。
「——俺の武器」
光が、収束する。
形になる。
銃。
異様なほど、
シンプルな銃。
「ひかる銃」
俺は思わず口を挟んだ。
「……いや、
名前それなん?」
「黙っとけ」
蛇が動く。
渋い声で、低く唸る。
「——排除対象確認」
引き金が引かれる。
パァン。
音は、やけに軽い。
でも——
光が、荒野を貫いた。
次の瞬間。
蛇が、
喉を押さえてよろめいた。
「……ぐ、わっ」
声が、
やたら渋い。
巨体が、
音もなく崩れ落ちた。
完全沈黙。
俺は、しばらく固まってから言った。
「……効果、
エグない?」
カツヤは、
もう銃を消していた。
「当たり前やろ」
「いやでもさ」
俺はまだ引っかかってる。
「もうちょい名前、
なんかあったやん」
カツヤは歩き出しながら、
肩越しに言った。
「俺が考えた訳ないやろ、」
俺は、倒れた蛇を見て、
空を見て、
カツヤの背中を見た。
——この世界、
センスの基準がおかしい。
俺は、
まだ納得してなかった。
「……でもさ」
カツヤの背中に向かって言う。
「素直に、俺もそんな武器ほしいわ」
カツヤは、歩きながら笑った。
「いや、お前の武器な」
ちらっと振り返る。
「武器ちゃうけど、
能力としては最強クラスやん」
「……は?」
「敵の情報、見れるんやろ?」
「いや、そうやけどさ!」
俺は食い下がる。
「この前のスライム、
1時間20分やで?」
「まず見れんし、
基本逃げなあかんし」
歩きながら、
両手を振る。
「そもそもやで?
QRコード取るの、
命懸けすぎるねん!」
カツヤは、少し考えてから言った。
「……いや、
まぁそれはそうやな」
少し間を置いて
続ける.
「でもな、
基本、武器は一個だけやで?」
「え?」
「ガチャは引けるけど、
どっちか選ばなアカン」
「2個持ちは、できへん」
俺は、思わず立ち止まった。
「……マジで?」
「マジ」
「で、ガチャは?」
カツヤは、
さらっと言った。
「500ポイントで、1回や」
「高っ!!」
思わず声が裏返る。
「全然無理やん!」
カツヤは、
ちょっと楽しそうに笑った。
「やろ?」
「せやからな」
肩をすくめて、
「最初のガチャが、
めちゃくちゃ重要やねん(笑)」
俺は、
自分のスマホを見た。
ポイント表示は、
相変わらず、寂しい。
——この世界、
スタート地点から
もう理不尽すぎる。




