【46話】ワン
——バチィン。
激しい音がした。
頭には頭突きの後のような
感覚だけ残っている。
「……え?」
目を、開ける。
目の前にあったはずの、
山みたいな影が——
ない。
静かすぎる。
雷も鳴ってない。
地面も、揺れてない。
「……あれ?」
恐る恐る、前を見る。
そこには——
倒れている、1《ワン》。
……ピクリとも動かない。
「……え?」
頭が、追いつかない。
「……今の、
俺が?」
次の瞬間。
ヒラリ。
空気を切るみたいに、
何かが落ちてきた。
黒と白の、四角。
QRコード。
ゆっくり、
本当にどうでもよさそうに、
地面に落ちる。
——ピコン。
スマホが勝手に震えた。
討伐完了
1《ワン》
獲得ポイント:1
「……1?」
思わず、声が出る。
「え?(笑)」
さっきまでの恐怖が、
全部、行き場を失った。
そして一瞬で
俺の膝は戻ってきた。
5キロ先からの恐怖。
最強。
勇者で半分、
魔王の信頼
——全部で、1。
「……なんやねん、それ」
ワンの身体は、
もうデータみたいに崩れ始めている。
誰にも見られず、
誰にも語られず。
ただ、
ポイントだけを残して。
赤黒かった空が、
少しだけ、薄くなった気がした。
俺は、
その場に座り込んで、
QRコードを見つめた。
「……スマロバ、
やっぱ頭おかしいやろ」
⸻
⸻
カツヤ視点
——ピロン。
異世界バーガー
交換条件
完了通知
「……ん?」
一瞬、間があって。
「は? マジ?!」
画面を二度見する。
「あいつ……
やりよったな」
次の瞬間、
。
——転送。
⸻
「おい!!」
振り向くと、
カツヤが立っていた。
「すげーなお前!!
QR取れたん?! 」
俺は、ちょっと間を置いてから、
「……いや、
QRってか……
たお、した?」
カツヤの動きが止まる。
「……は?」
「たおしたって、何が?」
「いやだからさ、
あー……
まぁ、これ見たら分かるかな」
俺はスマホを取り出して、
カメラを起動。
QRを読み取って、
アルバムを開く。
1《ワン》。
——タップ。
荒野の真ん中で、
男二人、
仲良く一台のスマホを覗き込む。
ちゃっちゃら〜。
《弱い犬ほどよく吠える。
ワン!!》
ちゃーら〜。
カツヤの目が、
ゆっくりテンになる。
「……あいつ、
もしかして……」
喉が鳴る。
「……めっちゃ、
弱かったって事?」
俺は、苦笑いしながら頷いた。
「うん、多分。
ごめんなさいしたら、
なんか消えてた(笑)」
カツヤ、俺の顔を見る、
何かに気づいて
徐々に目線が下がる。
「てかお前、
ズボンびちゃびちゃやん(笑)」
「これは……」
俺は視線を逸らす。
「……まぁ、
しゃーないやろ」
「勇者で半分やで?」
「……それ言うな」
カツヤは肩をすくめて、
「ん〜まぁ、
しゃーないか」
少しだけ笑って、
「うん。
まぁ、帰ろか」
「そやな……」
カツヤが慣れた手つきだ
スマホを取り出す。
「……なぁ」
「たまにはさ、
歩いて帰らん?」
カツヤが振り返る。
「ちょっと俺、
ズボン乾かしたいし」
「少し、歩こうや」
少し考えてから、
カツヤは言った。
「……まぁ、
一応ワンの情報はもらったしな」
、
「えーで」
複雑な思いを抱えた二人は、
並んで歩き出す。
赤黒かった空の下、
とぼとぼと。
街の方へ。
⸻
〜つづく〜




