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【45話】俺の膝


カツヤが消えた。


「えー……」


間の抜けた声が、

赤黒い空に吸われていく。


いや、無理やろ普通。

この状況。


とりあえず

一旦考える



——逃げる方法。

——そもそもやらんで済む方法。


スマホを見る。


強制契約執行モード

終了まで

ログアウト不可

移動不可


……笑。


「あいつ、鬼すぎるやろ」


思わず呟く。


「頭おかしいんちゃうん?」


完全に詰み。


「……んなら、やるしかないか」


まぁ、いつもの事や。

やってアカンかったら、

泣きべそかいて逃げるだけや。


……逃げられへんけど。



てか、挑発ってなんやねん。


相手、最強なんやろ?

中途半端な事ゆっても

そもそも寄ってこんのちゃうん?


なぜか親切に、横に置いてある

メガホンを手にとる


とりあえず——


「……あほ〜」


弱々しく叫んでみる。


反応、なし。


看板の外から、少し声を張る。


「おーい!

 1って、ワンってなんやね〜ん」


無反応。


沈黙。


「……デベソ〜」


自分でも意味分からん。


最後に、

ほんまにどうでもいい感じで、

さりげなく言った。


「お前、

 ほんまは弱いんちゃうんかー!!」


——ピク。


いや、

ピクやなくて、


バク。


何かが、遠くで、

どし〜んって鳴った。


「……え?」


ほんまに?


線、越えてないよな?

俺、まだ領域の外やんな?


次の瞬間。


さっき、半歩入った時の恐怖が、

まとめて押しかかってきた。


「……あ」


もう、無理。



普通にちびった



ただ——

1《ワン》は、

思ったより、圧倒的に早かった。


実際の時間は、多分10秒もない。

でも体感では、

700回ぐらい死んだ。


怖すぎて、

逃げる事も後ろも向けへん。


向こうから、

山みたいな影が近づいてくる。


スマホを取ろうとする。




——取れない。

目も、開けられない。


轟音。

地面が揺れる。


今までにした事のない恐怖。


この前、

なさけなく初心者狩りから逃げた時、

あれを「50」やとしたら——


……いや、

今回、例えられへん。


手が、動かない。


膝は震えてる……

どころか、


なんかもう、

俺を置いてどっか行ってる(笑)


頭の中にあるのは、ひとつだけ。


ごめんなさい

ごめんなさい

ごめんなさい


延々リピート。


目、開けてないはずやのに、

恐怖が瞼を突き破ってくる。


映像が、刺さる。


——めっちゃキレてる顔。


あと何秒かで、

俺の人生、終わる。


「……てか、

 異世界で死んだら、どうなるん?」


どうでもいい事を考えた、その瞬間。


——もう、目の前やった。


俺は、全力で、

本気のごめんなさい!!


頭を下げた。




__________


ピクッの視点


俺は、昔、弱かった。


強くなりたかった。

ただ、それだけやった。


でも、どれだけやっても

強くはなれなかった。


だから俺は、

強くなったフリだけを極めた。



とりあえず見た目。

刺青を入れた。

サングラスをかけた。

ジャラジャラと体に色んな物をつけた

体だけは、やたら大きくした。


怖そうなオーラ。

それだけを必死で磨いた。


すると不思議なもんで、

何人かが、勝手にビビって逃げ出した。


——何もしてないのに。


そのうち、

魔王からスカウトが来た。


特に断る理由もなかった。

というか、

今さら「実は弱いです」なんて

言えるはずもなかった。


気づいた時には、

もう誰にも言い出せなくなっていた。



この前、勇者が来た。


「……終わった」


正直、そう思った。

ついに、この強がりも終わりや、と。


でも勇者は、

割とすぐに逃げ出した。


多分、500メートルも来てない。


……正直、

少し、寂しかった。


もう、十分やった。



遠くの方から声がする。



最近は、

むしろ観光名所みたいになってきてる。


ただし——

誰も、5キロ圏内には入ってこない。


そんな時や。


風に混じって、

うっすら聞こえた声。


「お前、

 ほんまは弱いんちゃうんかー」


——図星。


果てしなく、図星。


気づいたら、

俺は立っていた。


……いや、

もう走っていた。



「よし」


心のどこかで、そう思った。


「こいつに決めた」


こいつに、

止めをさしてもらおう。


全部、正直に言って。

もう、引退させてもらおう。


俺は、そいつの前まで行った。


——次の瞬間。


そいつは、

全力の頭突きをかましてきた。


「……え?」


めっちゃ痛。


てか、


——俺、死んだ。


つづく

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