【43話】お口にチャック
久しぶりの連絡だった。
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あの日会ってから、
久しぶりに思い出した。
あの、
夜中に会った日から。
……3、4ヶ月は会ってない。
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初心者が入ったらアカン所に
入ったらしい、
って噂は聞いてた。
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「まぁ……」
心の底では、
アイツっぽいなって思ってた。
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……のに。
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この内容。
《異世界で飯奢ってくれへん?》
「……なめとんな?」
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でも。
「まぁ、えーけどな」
スマホの前で、
にやっとした。
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異世界の、
ある飯屋。
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「異世界バーガーセットです」
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無機質な店員が、
淡々と皿を置く。
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それは、
非常に……なんとも言えない。
魅力が、
たっぷりあった。
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この無機質な空間に、
妙に映えている。
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「いただきます」
口いっぱいに、
バーガーを頬張る。
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「ありがとうなぁ〜」
「飯だけ食べたかってん」
「ほんま助かったわぁ」
「やっぱ持つべきもんは
友達やなぁ〜」
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「……いつ友達なってん」
「まぁええわ」
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「ゆっくり食べえや」
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不思議やった。
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今まで、
誰にも喋れへんかったこと。
入ったらアカン所の話。
病院に入った話。
QRコード。
スライム。
全部、
カツヤには喋れた。
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横の席。
何人かの会話が、
盛り上がってる。
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「勇者、逃げたらしいな」
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「ぁー、1《ワン》やろ」
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……あぁ。
「そらしゃーないわ」
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「誰も勇者責めんって」
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「アイツだけは無理や」
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「ハハ、せやな」
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「ワンは無理やもんなぁ〜」
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主人公は、
バーガーをかじりながら言った。
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「この世界、勇者とかおるんや」
「すげーなぁ」
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「てか……ワンって誰?」
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「モンスター?」
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カツヤが、
少し考える。
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「あー……まぁ」
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「モンスターやなぁ」
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「分かりやすく言うと」
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「魔王の手下の四天王とかおるやろ?」
「それの……1人版」
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「……ブッ」
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主人公、
半笑い。
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「1人って」
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「そんなパターンある?」
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「普通5とか7とか12ちゃうん?」
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「1《ワン》て(笑)」
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カツヤが、
肩をすくめる。
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「いや、それはホンマそうやねんけど」
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「それくらい強いってことよ」
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「魔王も、それで納得してる」
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「てか多分……」
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「魔王も勝てんのちゃうか?」
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主人公は、
笑った。
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「そんなヤバい奴」
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「そんな奴、俺が見ること
一生ないやろうなぁ(笑)」
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「もう十分や」
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「スライム倒したし」
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「うまい飯も食ったし」
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「リナとかユウタには会いたいけど」
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「もう無理や」
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「こんな世界で、
俺はやってかれへん」
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カツヤが、
にっと笑う。
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「まぁ……」
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「そーもいかへんねんよなぁ〜」
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「……え?」
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少し、
ゾワっとする。
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「俺がさ」
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「ただでこの異世界の飯、
奢ると思とん?」
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ゾワっとした感覚が、
確信に変わる。
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「スマホ、見てみ」
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画面。
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《交換条件成立》
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《異世界バーガー 25ポイント》
《対》
《50ポイント以上の何か》
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「……は?」
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「いや待って待って」
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「待ってぇ〜」
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「俺ポイント持ってないで!?」
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「しかも50って倍やん!」
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「どないしたらええねん!!」
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カツヤは、
楽しそうに言った。
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「んー」
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「50ポイント以上の情報とかで
ええんちゃう?」
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ニヤッと、
笑って。
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「例えば……」
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「1《ワン》の情報」
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その瞬間。
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ナオキの、
口チャックのジェスチャーが
頭をよぎった。
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【つづく】




