【27話】 強制ガチャ
ピロン。
⸻
光が、消える。
眩しさが引いて、
視界が戻った瞬間。
主人公は、
手の中の“それ”を見た。
⸻
「……は?」
黒い。
画面は割れてる。
ボタンも、
一部反応してない。
⸻
スマホ。
いや。
明らかにスマホ“だったもの”。
⸻
テンション高い男が、
おもわず吹き出した。
「ぶはっ」
「うわ、これは……」
⸻
壊れかけの男が、
顔をしかめる。
「ジャンクか」
⸻
デカい影が、
短く言う。
「……武器、じゃない」
⸻
主人公は、
もう一度見る。
画面。
ヒビ。
通信不可。
【通信機能:なし】
【カメラ:不安定】
【アルバム:空】
⸻
「……これ」
喉が、
うまく動かない。
「これ、ハズレ?」
⸻
テンション高い男が、
肩を叩いてくる。
「まぁまぁ!」
「初回ガチャあるあるや!」
⸻
壊れかけの男が、
ため息をつく。
「期待値、最低ラインか」
⸻
デカい影は、
もう興味を失ったように
視線を外していた。
⸻
(……え)
(武器ガチャ、やんな?)
(スマホって……)
(しかも壊れてるし)
⸻
主人公の頭に、
嫌な予感が走る。
⸻
テンション高い男が、
明るい声で言う。
「いや〜」
「どんまい!」
⸻
壊れかけの男が、
淡々と続ける。
「まぁ、運がないな」
⸻
デカい影が、
一歩前に出る。
⸻
「お前」
「もう用はない」
⸻
一瞬。
何を言われたか、
分からなかった。
⸻
「……え?」
⸻
テンション高い男が、
あっさり言う。
「武器無し初心者はね〜」
「生きてても、みんな困るねん」
⸻
壊れかけの男が、
首を鳴らす。
「まぁ
「そうゆう事だな」
⸻
優しさ。
⸻
その言葉で、
一気に血の気が引いた。
⸻
(あ、これ)
(ほんまに殺される)
⸻
主人公は、
反射的に後ずさる。
⸻
デカい影が、
腕を振り上げる。
風圧だけで、
地面の砂が舞う。
⸻
その瞬間。
⸻
主人公は、
走っていた。
⸻
考える前に、
身体が動いた。
⸻
「お?」
「逃げるんか?」
テンション高い男の声が、
後ろで弾む。
⸻
壊れかけの男が、
笑う。
「ええ反応や」
⸻
デカい影の、
一歩。
地面が、
揺れる。
⸻
(無理無理無理!!)
(死ぬ死ぬ死ぬ!!)
⸻
必死で走る。
方向も、
分からない。
_______
走る。
とにかく走る。
⸻
背中に、
さっきまで確かにあった殺気が、
少しだけ遠のく。
(……まいた?)
そんな希望が、
一瞬だけ頭をよぎる。
⸻
森に入った。
木。
影。
湿った空気。
視界が一気に悪くなる。
⸻
主人公は、
倒れ込むように木の根元にしゃがみ込んだ。
息が、
追いつかない。
喉が、
焼ける。
⸻
(……無理やろ、あんなん)
(初心者にあれはアカン)
⸻
震える手で、
ジャンクスマホを見る。
画面は暗い。
通信なし。
地図もない。
⸻
「……せめて」
主人公は、
カメラを起動した。
理由はない。
ただ、
何かしたかった。
⸻
パシャ!!
⸻
——やけに、デカい音。
⸻
「……え?」
⸻
森の奥で、
空気が変わる。
⸻
ドン。
⸻
一歩。
⸻
ドン。
⸻
地面が、
揺れた。
⸻
「あ」
理解する前に、
身体が動いた。
⸻
「……あかん」
⸻
逃げる。
また逃げる。
⸻
(写真て!!)
(音デカすぎやろ!!)
⸻
心臓が、
喉まで上がってくる。
⸻
その時。
⸻
視界の端に、
明らかにおかしいものが見えた。
⸻
森の中。
木でも、
岩でもない。
⸻
ドア。
⸻
ぽつんと立っている。
周囲だけ、
空気が違う。
⸻
近づくと、
札がぶら下がっているのが見えた。
⸻
【入ったらアカン所】
⸻
(……は?)
⸻
誰が見ても分かる。
ここは、
ヤバい。
⸻
後ろ。
⸻
枝が、
折れる音。
⸻
気配が、
近い。
⸻
(どっちもアカンやん……)
⸻
主人公は、
一瞬だけ立ち止まる。
⸻
——それでも。
⸻
後ろには、
確実な死がある。
⸻
主人公は、
ドアノブに手をかけた。
⸻
次回
「入ったらアカン所」




