【26話】引く前に
夜は、
思ってたより冷えた。
地面が固い。
身体を横にしても、
どこかが必ず痛む。
腹も減ってる。
喉も渇いてる。
この世界、
優しさゼロ。
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空を見上げる。
星は、
普通に綺麗だ。
それが、
やけに腹立つ。
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目を閉じると、
いろんな顔が
勝手にチラつく。
リナ。
ユウタ。
すぐ、消える。
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あと、、
カツヤ。
(……おまえは見に来いよ)
声には出さない。
でも、
何回も同じことを思う。
俺が来たって知ったら、
あの感じなら、
一回ぐらい様子見に来ても
ええやろ。
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でも。
何も起きない。
通知も、
気配も。
完全に、
一人。
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いつの間にか、
少しだけ眠っていた。
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目を開ける。
空が、
薄く明るい。
夜明け。
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起き上がろうとして、
すぐ分かる。
「あ……」
痛い。
昨日より、
はっきり痛い。
治ってない。
むしろ、
悪化してる。
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腕。
脚。
動くけど、
重い。
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スマホを見る。
HP表示、
ない。
回復演出、
ない。
「……回復、
せぇへんの?」
もう一回見る。
何も変わらない。
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嫌な考えが、
腹の奥に溜まる。
(これ……)
(普通に怪我してるだけちゃうん?)
(このままやったら……)
(死ぬんちゃう?)
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その時。
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――ぞわ。
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背中に、
嫌な気配。
理由は分からない。
でも、
身体が先に理解する。
(来た)
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「お」
軽い声。
「まだ生きとる初心者やん」
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一人目。
装備はボロボロ。
見た目も、
普通。
でも、
立ち方が異様に綺麗だ。
目だけが、
完全に死んでいる。
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「忠告しとく」
肩をすくめる。
「この世界は」
「“何もしない”が
一番減る」
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意味が分からない。
聞き返す余裕もない。
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ドン。
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二人目。
デカい。
というか、
人間のサイズじゃない。
武器も、
身体も。
存在感が、
そのまま圧になっている。
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「ポイント、持ってる?」
低い声。
感情が、ない。
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主人公は、
反射的に一歩下がる。
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「持ってないなら」
「価値がないな」
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目。
完全に、
捕食者。
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「いやいやいや!」
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三人目。
横から、
突然割り込んでくる。
声がでかい。
テンションが、
おかしい。
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「初心者狩りってさぁ〜」
「ちゃんと“成長イベント”込みやろ?」
ニヤニヤしながら、
主人公を見る。
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「なぁ君」
「ガチャは?」
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「……ガチャ?」
思わず、
聞き返す。
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三人、
同時に反応した。
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「出た」
「まだか」
「最高やん」
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会話は噛み合ってない。
でも、
話だけが勝手に進んでいく。
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壊れかけの男が言う。
「この状況で
生き残る方法は、ひとつ」
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デカい影が、
腕を組む。
「武器、無ければ、死ぬ」
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テンション高い男が、
指を鳴らす。
「つまり!」
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スマホが、
勝手に震える。
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ピロン♪
【ガチャが解放されました】
【初回:無料】
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主人公の手が、
震える。
「……なんで、今」
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壊れかけの男が、
少しだけ笑う。
「“狩られる瞬間”が一番、
ええもん出るからや」
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三人が、
半円を描くように下がる。
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そして。
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「ひーけ!」
「ひーけ!」
「ひーけー!!」
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応援なのか、
煽りなのか。
分からない。
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デカい影が、
一歩前に出る。
「引け」
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主人公は、
スマホを見る。
指を、
画面に置く。
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「引くわ……」
(いや俺のタイミングで引かせろよ!!)
(でも引くしかない奴やん)
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ガチャ演出、開始。
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光。
眩しすぎる光。
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次回
「強制ガチャ」




