【25話】 ぷるん、ちゃうねん
いた。
思ってたより、
小さい。
丸い。
半透明。
「……ちっさ」
声に出す前に、
喉で止まる。
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なのに。
空気が、
重い。
理由は分からない。
ただ、
近づいたらアカン感じだけがする。
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スライムは、
動かない。
こっちを見ている……気がする。
目なんて、
ないはずなのに。
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主人公は、
気の棒を握り直す。
手のひらが、
少し湿っている。
「……よし」
声が、
ちょっと裏返る。
「いくで」
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棒を、
振り上げた。
その瞬間。
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シュッ。
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何かが、
走った。
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次の瞬間。
バキィッ!!
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衝撃。
棒が、
粉々に砕け散る。
木屑が、
空中に舞う。
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右手を、
見る。
……棒が、ない。
「……え?」
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視線を戻す。
スライムが、
いない。
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(どこ――)
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影。
目の前。
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ドン。
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強烈な衝撃が、
腹に叩き込まれる。
息が、
一気に抜ける。
視界が、
歪む。
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「っ……!!」
声が出ない。
内臓が、
ひっくり返る感覚。
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身体が、
地面を転がる。
止まらない。
痛い。
痛すぎる。
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(あかん)
(これ)
(全然、無理)
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起き上がる。
いや、
起き上がれない。
四つん這い。
むせる。
涙が、
勝手に出る。
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スライムは、
少し離れたところで止まっている。
さっきと同じ。
静か。
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「……ポイントとか」
咳混じりに、
呟く。
「そんなんちゃうやん……」
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次の瞬間。
主人公は、
全力で逃げていた。
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走る。
転びそうになる。
それでも走る。
情けない声が、
勝手に漏れる。
ほぼ、
泣いている。
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「なんやねん……」
「めっちゃ痛いやん……」
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どれくらい走ったか、
分からない。
気づいたら、
森を出ていた。
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夜。
街の灯りが、
やたら眩しい。
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「……宿屋」
ふらふらと、
建物に入る。
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カウンター。
受付の人が、
にこっと笑う。
「一泊、
50ポイントになります」
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「……あ」
今さら、
気づく。
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「……ポイント、
持ってないです」
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受付の笑顔は、
そのままだ。
「では、
ご利用できません」
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外に出る。
夜風が、
やけに冷たい。
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空を見上げる。
星が、
普通に綺麗だ。
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「……野宿やな」
誰に言うでもなく、
呟く。
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異世界初日。
スライムにボコられて、
宿にも泊まれない。
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俺、
何しに来たんやろ。
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つづく。




