【19話】 2人分の減り
開始と同時に何人もが一斉に
走り出した。
歩き出した奴、
恐る恐る踏み出した奴、
何のダメージもないと確認し
ほぼ全員がスマホ側にすすみだした。
何人かを除いて.......
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主人公は、
完全に止まっていた。
進めないんじゃない。
進める。
でも、
進むたびに減る。
減るのが、
怖くなった。
「やめろ……」
誰に向けた言葉か、
分からない。
「……やめてくれ……」
喉が裂ける。
声が、
情けなく裏返る。
「なんでやねん……」
「なんで……こんなん……」
足は震えている。
涙で、視界が歪む。
遠く。
ミサキとの距離は
全く縮まらない。
主人公の少し前にいるカツヤは
確実に一歩ずつ、
確認するように
まだ足を止めずに
歩いてた。
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「待って……」
「待ってくれ……!」
叫ぶ。
でも、
誰も止まらない。
向こうからこっちに
向かっているリナが見える
いやこっちではないな、
カツヤの方に向かっていた。
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〜カツヤ〜
俺の後ろでアホが泣き叫んでいる。
あいつはなんやねん
訳分からん、
お前余裕なんちゃうか?
どないやねん、
正直、俺も止まりたい、
なんならスタートから動きたくなかった。
無駄に減らす事なんかしたくはなかった。
ただ可能性として、お前が俺より前に
出る事は絶対に防ぎたかった。
それだけの話、
可能性を少しでも上げるために
俺はお前の1歩、2歩前にはいる必要がある。
あいつがお前を選ばないために......
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___________
〜リナ〜
私は、、
誰よりも走っていた、
今までの後悔を塗り替えるように走っていた。
足が軽い、
(こんなに気持ちよく走るのは何年ぶりだろう)
(ただ誰かの為に動けるって
こんなにも気持ちのいい事だったんだ)
助けたいのは誰かは分からない、、
ただ何も考えずに
走れるこの瞬間がたまらなく
最高の時間だった。
目の前にカツヤが見える、
そして、その後ろに、、あいつも見える、
もう泣いてる、とんでもない顔でこっちを見てる。
でも....
私はカツヤを掴んだ、
理由?
ただカツヤが前にいただけだよ..
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何組かのスマホとカバーは合流し、
GOALへと足を進めていた。
その頃ようやく
ここにきてミサキの足が動き始めた
1歩.2歩.
ただミサキの目はもう俺を見ていない、
何かを探している。
何処か遠くで叫び声が聞こえた。
ゴールの近くだ。
おそらく誰かが倒れたのであろう、
スマホ側かカバー側
どちらか、
いや
見てる限りカバー側は減ってない、
って事はスマホ側?
いやもう一度よく観察してみる。
合流したリナとカツヤ
さっきまでのカツヤの顔とは違う、
明らかに安堵の顔をしている。
リナはなぜか苦しそうだ。
ぁ
全てを察した、
だからアイツは動かなかったんだ。
一瞬だけ目が合う
すぐ目を逸らし
見ないまま、
口だけが動いた。
——ごめんね。
主人公の心が、
完全に折れた。
「うわあああああ!!」
泣き叫ぶ。
声も、
姿勢も、
全部みっともない。
床に手をついて、
嗚咽を漏らす。
「……嫌や……」
「死にたくない……」
「誰か……」
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リナがカツヤを掴んだ瞬間
リナの体から血の気が引いた、
ゾク、
(ぁ、、これやばい、
こんな減るの?)
さっきのスマホの表示を思い出す。
【カバー側】
ダメージ:なし
成功条件:スマホ側と共にゴール
(スマホ側はずっと
ダメージを受けてるんだ)
(カバー側に助けられるまで)
辛い、
心が痛い、
心が減っている、
私はもうダメだと思った。
これ以上は私の心がもたない。
リナは
ゴール目前で足を止めた。
振り返る。
スマホ側。
崩れ落ちている主人公。
「……は?」
カツヤが、
一瞬止まる。
リナの視線の先には
みっともない姿の
あいつが見える。、
泣いている。
情けなく。
必死で。
次の瞬間。
リナは、
全力で走り出した。
ゴールとは、
逆方向。
「え、おい!?」
誰かの声。
無視。
走る。
走る。
——何も考えない。
軽い、
ただ、かるい
あともう少し、
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主人公の腕を掴んだ。
「……っ!」
「……っは……!」
主人公が、
涙でぐちゃぐちゃの顔を上げる。
「リ……ナ……?」
リナは、
主人公の腕を掴んで
あるきだす。
「早よ歩け!!」
「おまえ……なんで」
「うるさい!!」
一歩。
ズン。
二歩。
ズン。
減る。
減る。
でも。
二人で進む。
ゴールは、
遠い。
でも、
確実に近づいている。
主人公は、
泣きながら笑っている。
「……ごめん……」
「泣きすぎやろ……」
息を切らしながら、
リナが言う。
「ほんま……」
最後の一歩。
ゴール。
光。
その瞬間。
リナは、
にっと笑った。
「お前、泣きすぎやろ(笑)」
——ぽしゅ。
初めて聞いた音。
聞いた瞬間、
ゾクっとした
リナが
スマホを取り出す。
チラッと赤色の表示が見えた。
その瞬間、画面は消え、
リナも消えた。
なぜかスマホだけが
宙に浮いていた。
⸻
白。
静寂。
主人公は、
呆然と立ち尽くす。
隣に、
リナはいない。
ただ。
胸の奥に残る、
確かな痛みと、
一緒に走った、
記憶だけ。
⸻
つづく。




