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【18話】スマホにはカバーをつけましょう

「……ねぇ」


耳元で、声。


主人公は肩を強く揺らされて、

はっと我に返った。


「聞いてる?」


横を見る。


ミサキが立っている。

いつもの軽い笑顔。


でも、

その奥が、どこか静かだった。


「ルール説明、終わったよ?」


主人公は、うまく言葉が出てこなかった。


頭の中で、

話の後半がごっそり抜け落ちている。


「……ユウタが」


名前を出した瞬間、

ミサキの視線が一瞬だけ止まる。


「あー……」


短い相槌。


「不参加?」


小さく頷く。


「そっか」


それだけ。


「まぁ、それも選択だもんね」


軽い言い方。

なのに、胸の奥に残る。



ピロン。


全員のスマホが、一斉に鳴った。


画面には、

簡素な表示。


【役割選択】

スマホ側/カバー側


説明文は、ほぼない。


「え、これ……?」


主人公が戸惑っている横で、

ミサキはもう操作していた。


指が速い。


「じゃ私、カバーね」


主人公が何か言う前に、

画面が切り替わる。


【選択完了】

あなたは「スマホ側」です


「ちょ、待——」


「聞いてなかったでしょ」


ミサキはあっさり言う。


「だからこっちで」


主人公は抗議しようとして、

言葉を失う。


視線の先。


リナとカツヤも、

それぞれ画面を見ている。


——どっち行く?


リナ

「私カバーで」


カツヤ

「んじゃ俺スマホな」


二人のスマホが光る。


リナ:カバー側

カツヤ:スマホ側


主人公の胸が、

少しだけざわついた。



ゴゴゴ……


低い音。


足元が、

ゆっくりと揺れ始める。


白い床に、

細い亀裂が走った。


「え……?」


次の瞬間。


床が、

“方向”を持った。


身体が、

引っ張られる。


強く、ではない。


でも確実に。


主人公とカツヤは、

同じ方向へ。


リナとミサキは、

反対側へ。


スマホ側。

カバー側。


空間が、

静かに引き裂かれていく。


ミサキ、リナ、カバー側が

ドンドン離れていく。


カバー側の頭上には


「START&GOAL」 

とデカデカと書かれていた。



スマホ側には——


「減」



主人公は、

恐る恐る一歩踏み出した。


ズン。


胸の奥に、

鈍い違和感。


「……っ」


痛い訳ではない、

苦しいとも少し違う。


でも、

確実に分かる。


何かが、減った。


隣を見る。


カツヤも、

同じように顔を歪めている。


「おい……今の……」


もう一歩。


ズン。


今度は、

息が浅くなる。


脚は動く。

止められてはいない。


でも、

進むたびに、削られる。


遠くを見る。


カバー側。


リナが、

必死に前に出ている。


その後ろに、

ミサキがいる。


いや.....

ミサキは、

ほとんど動いていない。


「ぇ、


なんで?」



距離がありすぎて、

声は聞こえない。


でも、

口の形は見える。


——進め。


——止まるな。


主人公は歯を食いしばる。


一歩。


減る。


一歩。


減る。


「……きつ……」


それでも、

進めてしまう。


目線をあげると

スタート位置から

一歩も動いていない、

仁王立ちの悪魔が立っている。



ふと。


ミサキと、

目が合った気がした。


その瞬間、

彼女の口が動く。


声は、届かない。


でも。


——ごめんね。


そう言った、

気がした。


その瞬間、

胸の奥で何かが噛み合った。


(あ)


(最初から……)


視線を落とす。


スマホ側。

減っていく側。


ミサキは、

安全な側にいる。


分かってて、

振り分けた。


主人公の足が、止まる。


寒気が、

背中を走った。


——裏切られた。


そう思った瞬間、

また、胸の奥がズンと痛んだ。


立ち止まっているだけなのに。



つづく。


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