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【17話】 後悔しない選択

ミサキの部屋を出たあと、

夕方の空はまだ明るかった。


なのに、胸の奥だけが妙に冷たい。


__________


次の日の放課後



「……あの」


振り向くと、ユウタが立っていた。


少し距離を取って、

両手を胸の前で組んでいる。


「昨日のタッグの話……」


言葉を選ぶみたいに、

一拍置いてから続ける。


「もし、まだ相手決まってなかったら……

 君と、組めたらって思って」


語尾が、

ほんの少しだけ上ずる。


主人公は答えようとして、

言葉が出なかった。


その沈黙の間に、

頭の奥でミサキの笑顔が浮かぶ。


あの部屋。

試すみたいな目。

“選ばせる”側の顔。


——あれを思い出した瞬間、

身体が勝手に距離を取っていた。


「……ごめん」


ようやく出た声は、

思ったより冷たかった。


ユウタは、

一瞬だけ目を見開いて。


すぐ、慌てたように首を振る。


「あ、ううん……全然」


「そうだよね、急だし」


「僕の方こそ、ごめん」


笑おうとして、

うまく笑えなかった。


「じゃあ……頑張って」


そう言って、

一歩下がる。


最後まで、

視線は合わなかった。


主人公は、

呼び止められなかった。


あのおぞましい笑顔と

もうひとつの暖かい笑顔がチラッとだけ

頭に浮かんだ。



その夜。


ユウタは、ベッドに座って

スマホを眺めていた。


タッグ参加締切まで、

あと数分。


誰の名前も、

画面にはない。


「……後悔しない、、」


小さく呟く。


スマホを伏せた、その瞬間。


——通知。



タッグ受付 終了


参加者:〇〇人

不参加者:〇〇人


不参加ペナルティ


-100ポイント


一瞬、意味が分からなかった。


次の瞬間、

画面の端が、赤く染まった。


息が詰まる。

視界が歪む。


体の中から、何かが引き抜かれる感覚。


心臓が一拍、遅れる。


「……は?」


床に膝をつく。

スマホを落とした。


音がしない。

落ちたはずなのに。


部屋の輪郭が、ぐにゃりと歪む。

壁が遠ざかって、天井が沈む。


何かが、削られていく。


それが何かは分からない。

でも確実に、戻らない何かだった。


ユウタは口を開こうとした。

声が出なかった。


ただ、

目だけが大きく見開いたまま、

闇に沈んでいった。



〜主人公〜


不参加ペナルティ

-100ポイント


その文字を見た瞬間

背筋におぞましいナニカが通ったのを感じた。


「ユウタ!!!」

_________


叫んだ瞬間、

地面が現れた。


見渡す限り、何もない。

白色の空間。


人がいる。

何十人も。


誰も喋らない。


胸が、強く締めつけられる。

さっきのユウタの背中が、頭から離れない。


俺が、断った。


その事実が、

今になって重くのしかかる。


空間の中央に、文字が浮かび上がった。


_________



少し離れた場所。


リナとカツヤが並んで立っている。


「……始まるな」


カツヤが言う。


リナは頷くだけ。


「後悔、しとるんか?」


少し間があって、


「……してる」


それだけ。


二人とも、

もう後戻りできないことは分かっていた。



空間の中央に、

無機質な文字が浮かぶ。



タッグバトル


ルール説明を開始します


・2人1組

・役割は「スマホ側」「カバー側」

・開始地点は分断されます

・制限時間内に合流し、ゴールしてください


淡々と、

感情の入り込む余地もなく。


主人公は、

ほとんど聞いていなかった。


頭に残っているのは、

選ばなかった背中。


そして、

あの笑顔。



説明が終わる。


地面が、

ゆっくりと割れ始めた。


選択は、もう終わっている。



つづく

次回

「スマホにはカバーをつけましょう」


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