【15話】それぞれの選択
その日の放課後。
空はまだ明るいのに、
なんとなく気分だけが夜みたいだった。
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〜主人公〜
イヤホン片耳、
スマホをいじりながら歩く。
学食のことを思い出して、
ちょっとだけムッとする。
(仲間って言っただけやん)
(あんな拒否られる?)
まぁええか、
と自分に言い聞かせた、その瞬間。
——ブン。
スマホが震えた。
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【スマロバ運営】
《次回対決:タッグバトル》
・自由参加
・2人1組
・参加締切:24時間後
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「……タッグ?」
思わず声に出る。
一人でやるもんやと思ってた。
いや、
一人でやるしかないと思ってた。
画面を見つめながら、
最初に浮かんだ顔。
——ユウタ。
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『なぁユウタ』
『タッグ、一緒に出ぇへん?』
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送信。
すぐ返事が来ないのは、
分かってた。
それでも、
ちょっとだけ期待してしまう自分が腹立たしい。
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〜カツヤ〜
自転車を止めて、
スマホを見る。
通知内容を読んだ瞬間、
眉が寄る。
「……クソが」
タッグ。
つまり、
“誰かを巻き込む”ってことや。
危ない。
このゲームは、
一人でも十分危ない。
なのに——
頭に浮かぶのは、
あの能天気な顔。
(使える)
(……いや、危なすぎる)
スマホを握る。
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【カツヤ → 主人公】
『お前、出るやろ』
『一応聞いとく』
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送信してから、
少しだけ後悔する。
昼間の学食を思い出す。
(なんで俺が誘ってんねん)
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〜リナ〜
人気のない道。
自分のの足音が、
やけに大きく響く。
通知を見た瞬間、
胸が締め付けられた。
タッグ。
誰かと、
“一緒に生き残る”って意味。
——あいつの顔が浮かぶ。
すぐに、
首を振る。
(ない)
(それは、ない)
スマホを見下ろして、
別の名前をタップする。
カツヤ。
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『……組まへん?』
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送信。
理由は説明できない。
でも、
それが一番マシな選択な気がした。
画面を閉じて、
小さく息を吐く。
(これでいい)
(これでいいはず)
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〜ユウタ〜
ベンチに座り込んで、
スマホを見つめる。
通知を読んだ瞬間、
胃がキュッとなった。
タッグ。
逃げ場が、
なくなる。
——ピロン。
主人公からのメッセージ。
指が止まる。
しばらく考えて、
正直に打った。
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『ごめん』
『今回は無理』
『正直、もう限界やねん』
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送信。
胸の奥が、
ちょっとだけ軽くなって、
すぐに重くなる。
(これでいい)
(巻き込まんで済む)
自分に言い聞かせながら、
画面を伏せた。
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〜ミサキ〜
コンビニの前。
お気に入りの
グミの袋を開けながら
器用にスマホを見る。
通知を読んだ瞬間、
口角が上がる。
「……来た」
タッグ戦。
一人より、
人が壊れる瞬間を見れる。
最高。
画面をスクロールして、
名前を探す。
——主人公。
「噂のやつ」
グミを噛み砕きながら、
歩き出す。
(あいつ、見に行こ)
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〜再び主人公〜
スマホが震える。
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【ユウタ】
『ごめん』
『今回は無理』
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「……そっか」
呟いて、
ポケットにスマホを突っ込む。
その瞬間。
「——あれ?」
後ろから、
明るい声。
振り向くと、
ミサキが立っていた。
「なに一人で暗い顔してんの?」
俺は、
苦笑い。
「いや、ちょっとな」
ミサキは、
俺のポケットを見る。
「タッグ通知、来たやろ?」
まだ相手決まってないよね?」
「え...
答える間も無く、ミサキが詰める
「まだ決まってないって」
「顔に書いてある」
少し間を置いて、
にっこり。
「ねぇ」
「作戦会議、しよ」
「作戦?」
「そ」
「どうせ今、暇やろ?」
夕方の風が、
少し冷たくなってきた。
俺は、
少しだけ迷ってから言った。
「……行くわ」
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それぞれが、
別々の場所で。
別々の理由で。
同じ通知を受け取った夜。
まだ誰も、
この選択の重さを
ちゃんと分かっていない。
⸻
(つづく)




