【第12話】視線の正体
朝は、
昨日の続きみたいに始まった。
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コンビニのコーヒー。
少し苦い。
いつも通り。
……いや、
いつもより視線が多い。
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歩くだけで、
空気が引っかかる。
「あ……」
「今の人……」
声、ひそひそ。
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別に、
何かした自覚はない。
強いて言えば――
電話、長かったなぁ、くらい。
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「おはよー」
ユウタが、
いつもより距離を空けて言った。
「……お、おはよう」
目、合わへん。
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「なんか今日、静かやな」
冗談のつもりで言ったけど、
返事はなかった。
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リナは、
遠くで誰かと話してる。
笑ってる。
完璧な笑顔。
……でも、
一瞬こっちを見た。
すぐ逸らした。
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なんやろ。
胸の奥が、
ちょっとだけ重い。
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「俺、なんかした?」
誰に言うでもなく、
心の中で聞いてみる。
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答えは、
出ない。
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スマホを取り出す。
いつも通りの画面
相変わらずバッテリーは
夜まで持ちそうもない。
触ろうとも思わない。
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ふと、
昨日のことを思い出す。
相手の、
最後の顔。
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――あれ、
勝ったんやんな?
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勝ったはずや。
でも、
なんか違う。
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勝った後って、
もっとスッキリするもんちゃうん?
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「……やばいな」
小さく、
そう呟いた。
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自分が、
どこに立ってるのか。
分からん。
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でも、
一つだけ確かなことがある。
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周りの景色が、変わり始めてる。
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昼。
知らん番号から、
通知が来る。
【観戦希望】
【対戦リクエスト】
【――あなたに興味があります】
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うわ、
めんどくさ。
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スマホを伏せる。
逃げるように、
ベンチに座った。
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「……まだや」
誰に言うでもなく。
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分かってしまったら、
戻られへん気がする。
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でも。
分からんフリを、
いつまで続けられる?
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空を見上げる。
いつも通りの、
青。
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……ほんまに?
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胸の奥で、
小さく、警報が鳴った。
まだ、音は弱い。
でも――
確実に鳴ってる。
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主人公は、
コーヒーを一口飲んで、
立ち上がった。
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「ま、いっか」
そう言って、
歩き出す。
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視線には、種類がある。
期待する視線。
羨む視線。
怯える視線。
探る視線。
そして——
何も考えていない、ただの視線。
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学校でも、街でも、
すれ違う時に、
一瞬だけ目が合って、すぐ逸らされる。
見られている、というより
測られている感じ。
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でも俺は、
深く考えない。
「たまたまやろ」
「気のせいや」
そういうのは、
だいたい気のせいや。
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ただ一つだけ、違う視線があった。
それは——
感情が、乗っていない。
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好奇でもない。
恐怖でもない。
期待でもない。
ただ、
「確認」するための視線。
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その視線が、
どこから来ているのか。
誰のものなのか。
その時の俺は、
まだ知らなかった。
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でも、確実に。
誰かは、
俺を“見つけていた”。
つづく




