【第一話】 スマホが、俺を選んだ日
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スマホが鳴った。
通知音でも、着信音でもない。
ただ、手の中で微かに震えただけだった。
ポケットから取り出すと、
見たことのない画面が表示されていた。
白地に、黒い文字。
やけに静かで、やけに目に残る。
――対決が選択されました。
意味は分からない。
でも、なぜかスクロールしようとは思えなかった。
指が、止まっていた。
その日から、世界は何も変わっていない。
電車はいつも通り遅れるし、
コンビニのレジは相変わらず混んでいる。
ただ一つ、
俺のスマホだけが違っていた。
画面を見ていないのに、
「次、通知来るな」って分かる。
実際に来る。
ズレない。
気持ち悪いほど、正確だった。
周りも、少しずつおかしくなっていった。
スマホを見て、急に笑い出すやつ。
画面を見たまま、固まって動かなくなるやつ。
誰も説明しない。
でも、皆どこかで理解している。
何かが、始まっている。
俺はただのAndroidユーザーだ。
性能は普通。
設定も初期のまま。
スマホに依存してる自覚も、正直ある。
だからこそ――
最初の相手が、あいつだったのかもしれない。
リナ。
最新のiPhoneを持っている。
画面はいつもピカピカで、
操作がやたら速い。
何も困ってなさそうな顔。
余裕が服を着て歩いてるみたいな女。
目が合った瞬間、
俺のスマホが震えた。
同時に、リナのiPhoneも。
画面に、同じ文字が浮かぶ。
――次回対決。
その下に、
短く、嫌な名前。
――バッテリーチキン。
意味は、まだ分からない。
でも、
嫌な予感だけは、
やけにリアルだった。




