4.私の場合
「後少ししたら帰ろっか」
「うん」
やっと冬休み。よく遊ぶ奈美ちゃんや小夏ちゃんとは会えないのが、ちょっと寂しい。けれど学校が苦手な私にとっては天国な冬休みが始まるのだ。
ただ、家の中はピリピリなんだよね。
受験でお母さんとお姉ちゃんの仲は、かなり悪くなっている。
『五月ちゃん、家にお泊りでもする?』
そんな時に美代子伯母ちゃんが声をかけてくれた。
『行く!泊まるー!』
私は、迷うことなく返事をしたのだった。
「今日は、波が穏やかね。私も拾おうかしら」
「私、あっちを見て言いい?」
あまり離れないようにねと言われて私は美代子伯母ちゃんとは逆方向へと足を向け始めた。
しかし、富士山が綺麗に見える場所だなぁ。スマホで撮れば、まるでポストカードみたい。
美代子伯母ちゃんは、真剣な様子でビーチグラスを拾っているようだ。
私も何か一つは持ち帰りたいなと探し始めた。
「これ、いる?」
急に暗くなったと思ったら、後ろから話しかけられた。波の近くにいたから、人の歩く音は消えていたらしく、全く気付かなかった。
「えっと」
いつもなら変な人は何処にでもいるから、やたら話すなとお母さんやお父さんから、しつこいくらいに言われている。
いつもなら守るけど、話だけてきたのは、私と同じか上くらいの男子だった。
「手、出して」
学校の男子なら、ゴミとかふざけてきそうだけど、この時の私は、言われるままに右手を出していた。
コロン
「…石」
「うん、石英。地層があるから拾える。最近は減ったけど」
その男子は、ホラと海から顔を出している岩を指さした。
「…綺麗」
その石は、少し透明で。向きを変えてみると、ただの透明だけでなく割れ目みたいな所が、きらきらと光っている。
「けっこういいよね」
「うん。光に透けるね」
「それ、あげる」
「え」
私のくせっ毛とは違い、その子の髪は、真っ直ぐで。海風でサラサラと音が聞こえそうな羨ましい髪を揺らせながらニカッと笑った。
「かいとー!帰るぞー」
「ほーい、じゃあ、また」
かいと、と呼ばれた男子は、お父さんらしき人に呼ばれて走り去った。なんか、軽やかな感じが、後ろ姿からして運動神経がよさそうである。
「あ、いいのかな」
手には、そのまま石を握っていた。確かセキエイと言っていたな。
「五月ちゃん、そろそろ帰ろうか。おばちゃん、お腹空いちゃった」
これまた、いつの間にか美代子おばちゃんに追いつかれていた。
「あら、石を拾ったの?いつもは貝殻だけなのに珍しいわね」
そう言われてみれば、美代子伯母ちゃんが集めている、波で丸くなった硝子、シーグラスは手伝って拾うけど、自分は貝殻ばかりかも。
握っていた石を光にかざせば、やっぱり透け感があり、割れ目にはつぶつぶが光っている。
『また』
確かに、まだまだ休みはあるし、今回は、宿題をちゃんとやるならギリギリまで伯母ちゃん家に泊まってよいと言われているから、家からとても近い海にはまだまだ行く予定だった。
「あったかい肉うどん作ろうかしら。五月ちゃん?」
「あ、ご飯たべる!」
私は、不思議そうに首を傾げている伯母ちゃんに、元気よく返事をして一緒に家へと向きを変えた。
五月のキラキラした物
もらった石




