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6話 決断

「ライラ嬢」

「?はい。いかがされましたか?メディルス様」


メディルスに、声をかけられたのは庭の木に吊るされた二人座り用のブランコに腰掛け本を読んでいる時だった。彼は隣にいいかと言うのでライラは座るところを空けてあげた。


「心を決めたので貴女に聞いて欲しくて」

「まぁ。そうなのですね」


ライラは少し緊張していた。このまま、やはり国に帰れと言われてしまったらどうするか、結婚して欲しいと言われたらどうするか。

どちらに転ぶか分からないパターン分けをしながら彼の言葉を待つ。


「やはり私は貴女を愛することは出来ないかもしれない」

「……はい」

「だが、結婚はすることができると、思う。貴女となら穏やかな未来を過ごせると、そう思った」


メディルスはまっすぐにライラを見つめるとそう言って柔らかく微笑む。


「……では」

「ああ。こんな面倒くさい男で良ければ、君の生涯の伴侶としてほしい」


ライラはほっとしていた。どうやら追い返されることは無さそうだ。


「ありがとうございます。メディルス様」


そう微笑めば彼も笑った。穏やかなやり取りに、これから過ごす時間もこういうものであればいいと思った。


「ふふ。結婚式まであと1週間しかないのに放り出されたらどうしようかと思っていたので助かります」

「それは……そうだね。父が強引ですまない」

「いいえ。いいんです」


それからブランコに揺られながらゆったりとこれからのことを話した。


「メディルス様はお子はお望みではないとか。私、自分に流れるウロボロスの血が必要なのだと聞いていたので覚悟していたのですが……」

「そうだったのだね。子供は……うん。居なくていいと思っているよ」


メディルスはどこか遠くを見ながらそう言った。


「せっかくウロボロスの聖印をお持ちですのに」

「だから、だよ」


メディルスの言いたいことが分からず、ライラは首を傾げた。


「我が家は4代連続でウロボロスの聖印を発現している。確率から考えても非常に珍しいことだと言えるね。だからもし子供に聖印が無ければその子はとても悲しんでしまうかもしれないだろう?」

「確かに期待はかかってしまうものでしょうね」

「私もね、長く聖印が発現せずとても辛い思いをしていたからよく分かるんだ」


なるほど。それがメディルスの考えならばとライラは受け入れようと思った。本当はちょっとだけ自分の子供というものが欲しかったが、そんな望みを言えばメディルスは困ってしまうだろう。


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