16話 整理
「奥様、このようなものでよろしかったでしょうか」
「ええ、ありがとうエデル」
ある日、ライラはエデルにお使いを頼んだ。エデルに買ってきてもらったのは鍵付きの箱。細やかな木彫りの装飾と派手にならないような宝石がはめ込まれたそれを開けると、ビロードが敷き詰められていた。
「イメージ通りだわ。ありがとうエデル」
「それはようございました」
ライラは自分の普段使いしているジュエリーボックスを開くと、そっとスヴェインから貰った思い出の品達をエデルが買ってきた箱に移しはじめる。
(これは最後にもらった首飾り……こっちはスヴェインとお揃いで買ったブローチ……)
1つ1つ大切な思い出を思い出しながら丁寧に移し替える。
ライラは決めたのだ、これからはメディルスを愛すると。だから、未練がましい贈り物たちは思い出だけ残して、しまい込むことにした。
全て移し替えた頃には、普段使いのジュエリーボックスはほとんど空っぽみたいになってしまった。
でもそれでいいのだとライラは思う。
これからこのジュエリーボックスにはメディルスとの思い出を詰めていくのだ。
パタンと箱を閉めしっかりと鍵をかける。
「……これでいいわ。エデル。コレを屋敷の物置の奥にでもしまい込んでちょうだい」
「かしこまりました、奥様」
小さな鍵をジュエリーボックスの端にしまうと、ライラは大きく伸びをした。大仕事が終わったのだ。
―――
メディルスの風邪はもうすっかり治っていた。あの後1日程は喉が痛いと言っていたメディルスは元々はあまり風邪をひかない体質らしい、すぐに良くなったと言って仕事に戻っていた。
「メディルス」
「やぁライラどうしたんだい」
「少し暇になったから、なにかお手伝いできることはないかなって」
「そう……だったら、書類の並べ替えをお願いしてもいいかな?」
そう言ってメディルスは1束……いや1山だろうかの書類を渡してきた。ライラは静かに書類の並べ替えを行う。案件ごとに書類を並べ替え、メディルスが処理しやすいように山を分ける。
静かな時間が流れる。カリカリと、メディルスが何かを書きつける音と、ライラが書類を整理する紙の音だけが響いた。
しばらくして、作業は容易に終わった。
「終わったわ、メディルス」
「ありがとう。そこに置いといて」
そう言って指をさすメディルスの手元を見て驚く。
ライラと一緒に買った、あのプラチナの結婚指輪が左手の薬指におさまっていたのだ。彼がそれを着けているところははじめてみた。
(嬉しい……)
夫の証明であるそれを、メディルスは指輪は潰してしまいそうで苦手という理由で着けてはくれなかった。ライラはそれでも買ってくれた事が嬉しくて毎日着けていたが、彼がそれを着けてくれないことを残念に思っていた。
じっと見つめていると、メディルスもライラの視線に気付いたのだろう、ふふと笑うと優雅に結婚指輪を撫でた。
「君が毎日これを着けてくれているのが嬉しくてね。僕も書類仕事をする時くらいは着けようかなって」
どう?と彼は左手をライラの前に差し出してきた。
ライラはそっと彼の手を取ると、その薬指にはめられた結婚指輪に触れる。
「嬉しいです、メディルス」
「ふふ。君に喜んで貰えて良かったよ。そういえばそろそろ結婚して半年か」
「そうですね、時が経つのは早いものです」
「記念に何か君に贈ろう。何がいい?」
そんな事を彼は提案してきた。
「では……メディルスが素敵だと思うネックレスをください」
「そんなのでいいの?ドレスでもいいんだよ?」
と彼は笑う。
ライラはジュエリーボックスに入れるものが増えるわと喜んでいた。




