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プロローグ 4.空の青

 天使との生活編に入ります。

 スローライフのようでスローではない島での生活ですが、こんな生活も楽しそうだな〜と考えながら書いています。

 天使を拾った翌朝、僕は眠い目を擦りながらパンを焼いていた。

 昨夜は天使に飲ませる薬を作った後、じいちゃんが釣ってくれた大量の魚の下処理をしていたら、終わった頃には夜明けが迫っていた。さすがに徹夜は体に良くないので、少しだけ仮眠をとったのだが、

(眠い……)

 やはり睡眠時間が足りていない様で、欠伸(あくび)をしながら(かまど)に薪を()べる。

 薪は貴重なので、パンを焼く時はなるべく数日分をまとめて焼いているのだが、暫くは2日に1回焼いた方が良さそうだ。

 じいちゃんには昨日20個くらい渡したが、朝昼がパンだけ生活になるだろうから、2日持てば良い方だろう。種類も1つだと飽きそうだから、明日はレーズンパンも焼いてみようかな。

 パンの焼けるいい匂いが漂い始めたところで、朝食用のスクランブルエッグを竈の火でついでに作る。

(一応天使の分も作るか)

 目覚めているかは分からないが、残れば僕の昼にすればいい。

「じいちゃんにも食べさせたかったなぁ。」

 朝食が終わったらじいちゃんの夕食を作る予定なので、せめて残り火で魚を焼いて届けよう。干物と違って生魚なら、時間が経っても向こうの蒸釜で温め直せば身もふっくらして美味しく食べられる。

 別宅の食糧庫も昨夜の内に電源を入れておいたから、そろそろ使える頃だろう。昨日渡せなかったバターも持って行こう。

 今日も午前中は家事と畑仕事がある。

 午後には昨日の続きの掃除もあるし、布の倉庫にも行かなければ。

(今日も大忙しだ)

 そういえば、結局昨日はゴミをそのままにしてしまった。まあ、また打ち上がった時に捨てればいいか。

 頭の中で今日の予定を考えている内に、パンと朝食が出来上がっていた。慣れとは素晴らしい。


 コン、コン、コン

 左腕に朝食のトレーを乗せて天使の眠る部屋の扉を叩く。

「入るよー。」

 ゆっくりと扉を開きベッドを確認すると、天使はまだ眠っている様だった。

(まだ早かったかな)

 ベッドサイドの小さなテーブルにトレーを置くと、僕は天使をまじまじと見つめる。

(きれいだな)

 静かに眠る天使は、髪と同じ淡い金色の長い睫毛に整った鼻、今は薄紫色の小さな唇が儚さを感じさせる、どこからどう見ても美少女の様相だった。

(人間だったら、きっと多くの人に愛されただろうに)

 無意識に頭を撫でると、長い睫毛が僅かに震える。

「あっ……。」

 ゆっくりと瞼が開き、空色の青い瞳がこちらを見た。

「おはよう……。」

 天使はぼんやりとした表情で目線を動かし状況を確認しようとしていた。

「ここはハテノ島、僕はピーター。君は海岸に打ち上げられていたんだ。」

 指差しながら説明をするが、どことなく伝わっていない気がする。

「君は大怪我をしているから、治るまでここに居るといいよ。」

 これは伝わったのか、コクンと頷いた。

「朝食を作ったんだけど、食べる?」

 トレーを見せると、ぐぅぅぅぅとお腹の鳴る音がした。どうやら食欲はあるようだ。

「ちょっと起こすよ。」

 僕は天使の上体を起こして壁に(もた)れさせる。それから右手にフォークを握らせて、

「召し上がれ。」

 トレーを載せたサイドテーブルをギリギリまでベッドに寄せて、食べやすくする。

「…………。」

 天使は数秒何かを祈ると、スクランブルエッグを口に運んだ。

 トレーにはスクランブルエッグの他に、サラダとパン、ミルクが置いてある。

 僕にとっては普通の朝ご飯だが、天使にとっては違ったようだ。

 ひとくち食べた瞬間、瞳がキラキラと輝き、そのまま凄い勢いで全部平らげてしまった。

 無表情なのに、美味しかったのが伝わってきて面白い。

「美味しかった?」

 僕が聞くと、大きくひとつ頷いた。

 何だこの可愛い生き物は。

「薬があるんだけど、これも飲んでくれる?」

 天使はコクンと頷くと、右手を差し出す。

 持っていた小瓶の栓を抜いて手渡すと、それを一気に飲み干した。

「…………。」

 何も言わないし、無表情だが、不味かったのが何となく分かった。

「ごめんね。でもこれを飲めば怪我が早く治るから、暫くは食後に飲んでね。」

 ギギギギギ……と音がしそうな速度で頷く姿はとても不憫なのに可愛かった。

 空腹が落ち着いたからだろう。天使はウトウトし始めた。

「もう少し眠るといいよ。おやすみ。」

 天使の体をベッドに戻し毛布を掛けると、直ぐに寝息が聞こえて来た。

 僕はトレーを持って静かに部屋を出る。

 ほんの僅かな時間だったが、とても楽しい時間だった。


 家事とじいちゃんへの配達を済ませて、僕は畑へ向かっていた。

 じいちゃんはひと足早く畑に向かっていたようで、僕が別宅に行った時にはもう居なかった。なので、テーブルにメモを残し、要冷蔵の物だけ食糧庫に入れておいた。

 昨日は雨の後だったので水やりの必要が無かったが、今日は水やりをしなければいけない。じいちゃんは僕より多めに畑を担当しているので、その分時間がかかるのだ。

(長雨は困るけど、雨が降ると助かるんだよな)

 今日も空は快晴で、雨の気配は全くない。

(天使の瞳と同じ色だな)

 家に居る不思議な存在を思い出し、自然と口角が上がる。

 天使は何が好きだろう。

 魚と肉ならどちらだろう。

 甘い物と辛い物、どちらを食べたがるだろう。

 まるで妹が出来たような気持ちで、あれこれ考えては浮足立つ。

「早く終わらせて帰るぞーーーー!」

 僕は畑へ向かって駆け出した。

 天使をいかに可愛く書けるか。

 ここが4話の見せどころなので、可愛いと感じて頂けていると嬉しいです。

 思っていたよりまだまだ続きそうなプロローグ…お付き合い頂けますと幸いです。

 次話でも貴方とお会い出来ますように。

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