表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

No.0002 嘘がつけない人物

最初に彼女を見たときの印象は「かわってる人」と感じた。


「花園くん、ネクタイがずれてるよ」そう言って、無表情で直してきてくれたのが、一ノ瀬凛だった。

僕は慌てて、「あ・・ありがとうございます」とちょっと俯き目で言って顔を挙げたら、もう、彼女の視線はパソコンに向いていた。

 周囲は彼女の事を"常識の異邦人"と呼んでいた。いつどこで何を言い出すかわからないからだ。

でも、花園には、何となく感じるものがあった。一ノ瀬凛は"嘘がつけない人"だと・・・


だから、ありえない、内部告発の資料を勝手に持ち出し上司を追い込んだ?

そんなこと彼女には不可能に決まっている。


「おまえさ、まだあの人の事庇うつもりなの?」

同期の田中が気まずそうに小声で言い寄ってきた。

「うん」

「やめとけよ、関わらない方が安全だろ」

「関係ないよ」

花園はそう言って、その場を離れた。

彼女の常識が社会の常識と少々のズレがあるのは、事実。

 でも、自分にとってはズレが救いになってた。


半年前花園がプレゼンで大失敗し、上司に怒鳴られて廊下で座り込んでいた時、誰も声を掛けなかった中で、一ノ瀬凛だけが、言った。

「失敗はよくあること。問題は次は、どうしたらいいかですよ、同じことは繰り返さない事」


率直なアドバイス、確かに頷ける。そして真心が伝わった。偽りもない飾りもない、透明な言葉だった。

 だからこそ、信じる、一ノ瀬はズルい思考なんて一ミリも持っていない事。


昼休み、人気のない会議室で一ノ瀬凛が一人座っていた。パソコンを開き、しらべていた。

「先輩」

一ノ瀬は顔を上げた。

[何か?」

「僕、手伝います、濡れ衣晴らしましょう」

しばらく沈黙した・・・。

その後、くびをかしげて、

「ありがとう、花園くんの評判まで悪くなりますよ」

「構いません」

迷いのない声に、ほんの少し目を濡らしていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ