拒めずに堕ちたオトナ
「吉宮せんせぇ、恥ずかしがってないでシようって」
「あっ……倉本くん。ちょ、待っ——」
倉本が私をファイルや資料が隙間なく並んだ棚に追いやり、両手を棚の硝子の頭を挟む位置に突いた。
彼の口端が弛んでおり、翻弄させる気をビシビシ感じる笑みも相まって、逃げようにも逃げられる脚ではなかった私。
彼の吐息は顔に掛かっており、生徒の顔が至近距離に有り、思考が正常に働かない。
私は異性として、倉本治輝を恋愛対象としてみていない。生徒に対して、恋愛感情を抱いていない。
真面目な印象を受ける倉本が私に対し、セックスをしたいと打ち明けて来たのは一ヶ月前だった。
「由佳、そんな恥ずかしがる演技なんてせずに素直に求めなよ」
「演技じゃなく、ほんと恥ずかしいんだって……倉本くん」
私は彼に至近距離で見つめ続けられ、床にへたり込む。
埃が薄らと積もった床にへたり込む私に、彼が目線を合わせるように踵を浮かせ足先でバランスを取り、屈んだ。
「朝からアソコが疼いてたんじゃないの、由佳ァ?ボクに由佳の可愛い顔を見せてよ。可愛い声も聴きたいなぁ」
彼が私の穿いているミディスカートの中に右腕を伸ばして、ショーツのクロッチを指先で触れてきた。
「あっぁんっ!んんっ……ちょ、くらもっ……はあぁああんっっ!ちょっ……ん……い、やぁ……っんあぁ!」
「あはっ……ん〜っ良いねぇ!由佳の声って、やっぱ可愛いよなぁ〜!もっと、もっともっと聴かして、由佳の可愛い声っ!」
放課後であるが、部活で居残っている生徒や教師も校舎内を彷徨いていて、印刷室の前を通り過ぎないという保証もない。
私が穿いているショーツのクロッチを触れる彼の指先が執拗で、10分も経たずにショーツが濡れた。
ショーツ越しに敏感なワレメを撫でられ続けて、喘ぎ声を堪えられるわけがなく、棚に背中を凭れて片手で誰かに気付かれないように片手で口を押さえているが、喘ぎ声は洩れていた。
彼が欲求を抑えられなくなったようで、私のワレメを撫でながら右隣に腰を下ろし、左腕を背中と棚の僅かな隙間に通し、Vネックのカットソーの腹を覆う部分を捲り上げ、ブラジャーを下ろさずに左胸を揉み始める。
彼は、曲げた脚の膝までショーツを下ろし、指を膣に挿れ始め、私は今までの喘ぎ声よりも激しくなった。
脚の裏の感度が上がって、撫でられると喘ぎ声を耐えられなくなっていた。
身体中が汗ばんで、額に前髪が張りついていた。
彼がとうとう我慢出来なくなり、制服のスラックスのベルトに手を掛け——スラックスを下ろした。
「ボク、もう無理ぃ……吉宮先生の中にっ——」
彼は私と向かい合い、収まりきらなそうなアレを膣へ挿れてきた。
淫らな物音が印刷室に響き出し、誰かに気付かれたら言い訳が出来ない。
私は辞めてほしいのに快感に身体が抗えず、抵抗できずにされるがままだ。
私が彼とこのような淫らな行為をしたのは、今日が初めてではなかった。
私は、教師失格だと、自覚している。
生徒に迫られ、禁じられている行いだと認識していながら、受け入れてしまった。
他人に責められ、蔑まれても、文句は言えないのだ。
気持ち良さそうに喘ぐ男女は、教師と生徒という関係で、世間から褒められたことではない。
「気持ちよかったよ、由佳ぁ……」
「私も治輝の——気持ちよかった」
私は言ってはならない言葉をつい洩らす。
拒絶しなくてはならない私は、彼の行為を肯定してしまっていた。
私が教職に就き、人生のどん底に堕ちたのは倉本治輝という生徒に関わろうとして、関わったのが原因だった。
私は両親と最期の別れを迎える際に、「お母さん、私が生まれてきてごめんなさい」と、手を合わせるだろう。
吉宮由佳がその後の人生をどう過ごしたかは、誰も知らない。