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32話 ブルジア王国の秘宝を追え!


 その日、リリアは生徒会へ向かう前に学園内の郵便ポストへと向かった。

 各生徒や教師など学園宛ての郵便物を回収するのが彼女の役目だ。

 ポストの扉を開け、そこから郵便物、小包、各地方の新聞紙を回収していく。


「ええと、これで全部ですね」


 扉を閉め、その場を後にしようとしたとき一部の地方紙をばさりと落としてしまう。

 拾い上げようとして身をかがめ――


「あら?」


 一面に書かれた記事が目に入った。写真付きの記事だ。

 手に取って詳細を読んでみる。するとたちまちリリアの表情が固くなり始めたときは早足で駆けていった。


 ◇◆◇


「はっくしゅんっ」


 生徒会室で盛大なくしゃみがひとつ。


「お、でかいくしゃみだな。ヴィック」

「大丈夫か? ヴィクトリア」

「だいじょーぶ。きっと誰かがボクのウワサでもしてるんだよっ」


 そう言ってずずっと鼻をすする。そこへすかさずテンがヴィクトリアの額に手を当てた。


「……すこし熱っぽいヨ。ワタシの手で冷やすネ」

「ありがとー」


 そこへ生徒会室の扉が勢いよく開かれた。


「み、みなさん……大変です!」


 リリアが肩で息を切らしながら言う。そのただならぬ様子に生徒会一行がざわめく。


「ど、どうしたのじゃ? そんなに血相を変えて」

「これを見てください!」


 手にしていた郵便物を傍らに置き、地方紙をテーブルいっぱいに広げる。

 リリアがここですと記事のひとつを指さし、全員がそこへ顔を近づけた。


『ブルジア王国にて国王が希少品の宝石を入手!』


「ブルジア王国というと、人間界の国じゃな……」

「ボク聞いたことあるよっ。王さまはなんでも大陸いちのお金もちなんだって」

「でも国王は成金趣味らしいヨ」

「よーするに王様が自慢してるってわけか」

「とにかくこの写真を見てください!」

 

 業を煮やしたリリアが指さしたのは記事の横にある写真だ。国王らしき中年男性が満面の笑みで台座に飾られた、手のひらほどの大きさの宝石を指し示している。

 

「んん……?」


 全員がさらに顔を近づける。写真に写っている宝石は白黒ではあるが、これまでの冒険で何度も目にした()()を見間違えるはずはなかった。

 すなわち――


「魔鉱石だ!」

 

 全員が同時に発する。

 すかさずヴィクトリアがゴーグルを装着し、写真に写った宝石を拡大して鑑定を。

 

「この形状、光の反射具合から見て、ほぼ間違いなく魔鉱石だよっ!」


 ゴーグルを外して一気にまくし立てる。ヴェルフェが地方紙を手に取り、記事を読む。


『先日行われたオークションにて、希少品の宝石をブルジア国のガメッツイ国王が落札した。

 一週間後に国王の城にてお披露目パーティーが行われる予定である――』

 

「うぅむ……どのような経緯かは知らんが、誰かが魔鉱石を拾い、それをオークションにかけてブルジア国王が買い取ったという訳じゃな」

「今から一週間後って、もうあんまり時間ないよっ」


 そこへテンが世界地図を持ってテーブルに広げた。


「パンデモニウム学園がここネ。ブルジア王国が――」


 学園のある場所からすすと指を滑らせ、魔界から人間界へと飛び出していき、やがてぴたりと止まった。

 指し示した場所は王城の絵が描かれている。

 

「ここからブルジア王国まで馬車だと三日はかかるヨ」

「うむ……じゃが、途中で休憩を挟む必要があるから四日はかかると見ておいたほうがいいな」

「ブルジア王国に行って国王に譲ってもらうよう直談判するってわけか」

「それはないよ」

 

 真壁の言葉にヴィクトリアが首を振る。


「王さまは手に入れたものは絶対に手放さないんだ。だからいくらお金を積んでも無駄だよっ」

「うむ。ヴィクトリアの言うとおりじゃ」

「じゃ、どーすんだよ……って、まさか」


 ヴェルフェがこくりと頷く。


「そのまさかじゃ。ブルジア王国に潜入し、悟られぬよう盗み出すしかあるまい。幸い、適任者がおるでな」


 適任者と聞いてすぐにダーク・テールことティアのことが思い浮かんだ。


「モンダイガモウヒトツアリマス」


 全員がクリスの方を見た。


「パーティーカイジョウ二 シノビコメルジンブツモヒツヨウト ハンダンシマス」

「クリスさんの言うとおりですね。少なくとも未成年の私たちでは会場に入れませんし……」

「そもそも魔族のワタシたちじゃ門前払いどころか、大騒ぎになるヨ」

「うむ……大人の人間でかつ、社交場に出てもおかしくない人物がいるかのぅ?」


 全員がううむと首をひねる。

 そこへ扉が開き、魔女の装束に身を包んだ者が入ってきた――


「なんや? 難しい顔してどうしたん?」


 顧問であるシルヴィーが銀髪をたなびかせながら煙管を咥える。


「適任者キタ――――!」


 いきなり真壁が大声で指さしたのでシルヴィーが面食らう。


「な、なんやの……?」

 

 シルヴィーがきょとんとし、被っているとんがり帽子がずれた。


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