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31話 キャッツ♡アイズ 中編


 学園の図書室にて、ティアはその日もカウンターにて本を読んでいた。

 

「……あれがダーク・テールかもしれない子か?」

 

 真壁が書架から顔をのぞかせながら。


「みたいよ。でも泥棒を働くようには見えないけどね」


 真壁の下からヴィクトリアがひょこっと顔を出す。


「見た目で判断するものではない。案外食わせものかもしれんぞ」


 ヴィクトリアの下からヴェルフェが小声で話す。

 そこへ別の図書委員が大量の本を持ってカウンターにやってきた。

 どんと高く積まれた本を乱暴に置いたので、ティアがはわわっと慌てふためく。


「ねーねーこの本片付けといてくれない? あたしこれから予定あるんだからさぁ」

「は、はいっ。わかりました!」

「んじゃ頼んだよー」

 

 ひらひらと手を振りながらその場を後にする。残された黒猫の獣人はふぅっと溜息をつく。


「しかたないですね……」


 読んでいた本を置き、積まれた本を持って元の場所へ戻すべく歩こうと――

 積み方が悪かったのか、ぐらぐらと揺れた。


「はわわっ! 本が……!」


 バランスを取ろうとして体を左右に動かすが、それがまずかった。

 足がもつれ、そのままべしゃっと前に倒れる。


「わわわ……っ!」


 慌てながら本を回収する様子を見て、これまた書架に身を潜めるリリアが首を傾げる。


「……私にはどうしてもあの方が泥棒には見えないのですが」

「獣人は見かけによらないものだヨ」

「ですよね……」

 

 やっと本を元通りに重ね、そのまま奥のほうへと消えた。


「なぁどうする? 本人にダーク・テールですか?って聞くわけにもいかないだろ?」

「うむ……なんとかして本人に悟られずに正体をつかみたいものじゃが……」

「ワタシニ カンガエガ アリマス」


 一行がクリスを見る。


「ジュウジンハ スバヤイノデ ナカナカツカマエラレマセン。ソレナラ オビキヨセレバ イイノデス」

「なるほど……一理あるな……」


 クリスの話を聞いたヴェルフェが指を顎に当てながら。


「問題はどうやっておびき寄せるか、ですよね……」


 リリアがティアの様子を伺いながら言う。そこへ真壁が挙手を。


「ひとつ確認なんだが、猫の獣人ってのは猫の生態と変わらないのか?」 

「うん。そんなに大きくは変わらないはずだよっ」

「よし。俺に考えがある」


 小声で策を話すと一行がなるほどと頷く。


「うむ。それなら彼女を捕らえることが出来るかもしれんな……しかし、お主は本当に悪知恵が働くのぅ」

「いやいや会長にはかないませんって。とりあえず植物園に行ってくるわ」

 

 ◇◆◇


「というわけで、そういうモノがあれば欲しいんだ」

「お話はよくわかりました。それならちょうど似たようなものがあります」


 ネルが手を伸ばすと、近くの植物がツルを伸ばして彼女に何かを渡す。

 

「どうぞ」

「さんきゅ! この世界にも似たようなのがあって助かったよ」


 ネルからどんぐりの形をしたものをポケットに入れる。


「さて、あとは風紀委員だな。あいつら上手くやってるといいが」


 ◇◆◇


 その日も連兵場は勇ましいかけ声で稽古が行われていた。


「おいっすーエリっち☆」

「久しいのぅ。エリザ」

「オジャマシマス」


 風紀委員長を務めるエリザがヴィクトリアとヴェルフェに気づき、「そこまで!」と制止の声を。

 風紀委員一同がすぐさまずらりと並び、剣を垂直に構える。


「お久しぶりですね会長。ノワール地方以来ですか。して、こちらの方は? 人間とは思えませんが……」


 エリザがちらりとクリスのほうを見ながら。


「ふふん、ボクが造った人造人間だよっ。魔鉱石で動かしてるけど、ボクの考えた機構によって――」

「名はクリスじゃ。彼女も魔鉱石集めを手伝ってもらっておる」


 会長が遮るように説明したのでヴィクトリアがぷくーっと頬を膨らませる。


「なるほど……それで今回はどのようなご用件でしょうか?」

「うむ、実はな……」


 事のあらましを説明するとエリザの顔がますます強張った。


「ダーク・テールのことなら私も承知しております。彼女には何度、目の前で逃げられたことか……! くっ!」


 わなわなと拳を震わせる。


「どうやら浅からぬ因縁があるようじゃな……実はお主ら風紀委員会にひとつ頼みがあるのじゃ」

「私達に出来ることならなんなりと!」


 エリザがどんと勢いよく胸の甲冑を叩く。だが、その拍子に首がぽろりと落ちた。


「アブナイ!」


 すかさずクリスが受け止める。


「ダイジョウブデスカ?」

「あ、す、すまぬ……」


 クリスの手のなかでエリザが礼を言い、元の場所へと戻されると改めて礼を言う。


「失礼しました。それで頼みたいこととはなんでしょう?」

「うむ。それは――」


 ヴェルフェから話を聞き終えたエリザはなるほどと頷く。


「それでしたらお安い御用です。我々風紀委員一同にお任せを!」


 エリザが剣を抜き、片手で垂直に構える。


「うむ頼んだぞ。あとはあのふたりじゃな」


 ◇◆◇


「ねぇねぇ聞いた?」

「アレでしょ? この学園でたったひとりの男の子が持ってるお宝がすごいらしいって」

「でもどんなお宝なんだろね?」

「あたしが聞いた話じゃ、あのダーク・テールでも盗めないらしいよ」

「マジで!?」


 学園の廊下にて数人もとい数匹の女学生がきゃいきゃいと噂話に花を咲かせていた。

 その様子を廊下の角から伺うものがふたり――


「どうやらうまく広まってくれたみたいですね!」

「噂話というのはあっという間に広がるものだヨ」


 リリアとテンが真壁の指示のもと、作り上げた噂話が効率的に広まったのを確認する。

 

「あとはダーク・テール……いえ、ティアさんが噂話を聞きつけてくれるといいのですが」

無問題(モウマンタイ)! 『モンスターの口に戸は立てられない』と昔から言うネ」

「はい!」


 テンがぐっと親指を立てたのでリリアもそれに倣った。


 ◇◆◇


 本の整理を終えたティアが図書室の扉を施錠し、ふぅっとひと息つく。

 廊下を歩いていると、目の前の女学生がひそひそと何かを話しているのが見えた。

 声をひそめても猫の獣人であるティアの耳は正確に捉える。

 

「――あのダーク・テールでも盗めない宝があるんだって」

「マカベとかいう生徒の部屋にあるらしいんだって」


 女学生の隣を通り過ぎ、両耳をぴくぴくと震わせながらティアは「へぇ……」と口元を歪め、眼鏡を外す。


「このあたしに盗めないものですって? なめられたものね」


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