16話 それぞれの決意 テンの場合
生徒会室から自室へ戻ったテンはそのままベッドへ腰掛ける。そしてふぅっとひと息。
会長に言われたことが思い起こされる。
『テン、お主はもう二度と魔鉱石を飲み込むという馬鹿な真似はしないでほしいのじゃ』
ルイーザの屋敷では魔物と化したルイーザを倒すために魔鉱石の力を借りたわけだが、危険な賭けといってよかった。
それこそ命を落としかねないほどの――
それだけではない。以前、図書室で偶然札が剥がれ、生徒会だけでなく生徒たちを危うく傷つけるところだったのだ。
これから今まで以上に厳しい状況に置かれる可能性はあるだろう。だが、だからといって自らの命や仲間を傷つけてまで目的を達しようとは思いたくない。
「……となると、アレを使うしかないネ」
ベッドから立ち上がり、箪笥のほうへ向かう。引き出しのひとつに手をかけて開く。
そしてそこから黒い木箱を取り出す。そのまま机の上へ木箱を置き、蓋を外す。
中身はテンの額に貼られた札と同じものが何枚もあり、色違いの札もいくつか収まっている。
次に筆と硯、墨を取り出す。硯で墨汁を作り、筆に墨をつけたのちに札に見慣れない文字や文様を描いていく。
十数分後、最後の札に文様を描き終え、筆をことりと置く。そしてふぅっとひと息。
「ひとまずはこれでいいネ」
文様の描かれた色違いの札を色毎にわけて揃え、木箱に納める。
「……今度は必ず守ってみせるヨ」
そう決心すると蓋をぱたりと閉じた。




