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14話 ルイーザ・マンション②


 ヴェルフェたち一行は学園の最上階にいた。

 会長がコンコンと目の前の厳重な両開きの扉を叩く。


「どうぞお入りください」


 扉の奥から(りん)とした女性の声。


「皆、準備はよいか?」


 見ると、真壁以外の全員がサングラスに似た眼鏡を装着するところだ。


「はいこれイタルの分ね」


 ヴィクトリアが真壁の分を渡す。


「おおさんきゅ。てか、これなんなんだ?」

「それは部屋に入ればわかるよ☆ 絶対に外しちゃダメだからね」


 ヴィクトリアがゴーグルを下ろしながら言う。同じ機能が備わっているのか、レンズの(ふち)を回すとレンズが黒くなった。

 全員の準備が完了したのを確認したのちにヴェルフェがこくりと頷く。

 そして失礼しますと言って入室する。

 学長の部屋――つまり学長室は生徒会長室と同じくらいの広さで、重厚な本が並んだ本棚が壁一面に配置され、部屋の正面には執務机が。

 机に座する学長は書類をとんとんと揃えたのちに傍らに置く。


「あら? 会長さん。それに生徒会の皆さまも。お久しぶりですね」


 老眼鏡を外してにこりと微笑む。その物腰は柔和な老婆のそれだ。ただひとつ、頭部の髪を除いては――

 髪、いや正確には無数の蛇が細い舌をちろちろさせながらビーズのような目で生徒会一行を見つめる。


「この子たちも皆さんと久しぶりに会えて嬉しがってますわ」

 

 そう言ってメデューサである学長、エウリアはほほほと口に手を当てながら上品に笑う。

 サングラスがなければ一行はたちまち石になったことだろう。


「学長、本日こちらに参ったのは――」


 これまでの経緯と真壁が元の世界に戻るのに必要な魔鉱石を集めていることをかいつまんで説明を。

 ヴェルフェの説明を学長はふむふむと頷きながら聞く。


「ということで、遠くまで飛んだ魔鉱石を手に入れるために外出許可が欲しいのです」


 最後まで聴き終えたエウリアはうんと頷く。


「お話はよくわかりましたわ。会長、それと皆さんのご活躍は聞き及んでいますよ」


 にっこりと微笑む。心なしか蛇たちも嬉しそうに体をくねらせている。


「では……!」

「ですが、許可は出せません」


 意外な通告に生徒会一行がざわめく。


「し、しかし真壁が元の世界に帰るためには……!」

「事情はよくわかります。ですが、学生の本分は勉強で、学ぶことにあります」

 

 「それに」とさらに続ける。


「学園の外は大変危険な場所もあります。そのようなところに本校の学生を向かわせるわけにはいきません」

「それじゃ俺は元の世界に帰れないんじゃ……!」

「真壁さん」


 凛とした声が遮る。


「お気持ちはわかります。ですが、外の世界はあなたが思っている以上に危険な場所なのです。それこそ最悪、命を落としかねないことも……」


 いったん区切って反応を見る。反論する者はいなかった。


「その点、当校は安全な場所です。魔鉱石を探すという途方もない旅に出るよりは良いでしょう。もちろん快適な学生生活が送れるよう配慮はします」


 良いですね?と締めくくられた。やはりこれも反論できなかった。

 その時だ。扉からコンコンとノックの音がしたのは。学長が「どうぞお入りください」と入室の許可を告げる。


「失礼する」


 低く、だが響きのある声と同時にがちゃりと扉が開かれた。

 扉から姿を現したのは漆黒のマントをたなびかせ、兜を被った魔王だ。

 学長ふくめ、一同がどよめく。最初に口を開いたのは会長だ。


「ち、父上……?」

「え? お前の親父なのか?」


 真壁がヴェルフェと魔王を交互に見る。


「久しいな。我が娘よ」

 

 父である魔王は久々に再会した娘にそう告げた。


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