1話 絶叫生徒会へいらっしゃい!
小説家になろうでの三作目です!
どんよりとした黒雲から雷鳴が轟き、雷光が王城を思わせる建造物――パンデモニウム学園の一室を窓越しに照らす。
その部屋は照明と言えば壁にそれぞれ掛けられた燭台の三本の蝋燭のみで、部屋の中央に位置する長机に座する者たちの顔を仄かに浮かび上がらせた。
「全員揃ったな……?」
机の上座、玉座らしき椅子に腰掛ける者が見回してから、そう口を開いた。
全員そろっていることを確認してから小さく頷く。
「では、これより会議を――」
途端、部屋がパッと明るくなった。
「ギャアアアアアアアァァッ!! 目がッ! 目がァアアアアアアアッ!!」
いきなり点いた天井から下がったランプの光で全員が目を覆う。
「ごめんごめーん。ボクが発明した電気仕掛けの照明機を早くお披露目したくてさ」
壁のスイッチから手を離し、ゴーグルを外して頭にかけた、白衣に身を包んだ赤毛の少女が悪びれることなく言う。
「なにを考えてるのじゃ! ヴィクトリア! せっかくの雰囲気がブチ壊しじゃろが!」
そう声を荒げるのは玉座に腰掛ける桃色の髪と頭に頭に角を生やした少女がびしっと張本人を指さす。
頭に角と書いたが、むろん比喩などではない。実際に角が生えているのだ。それこそ牛の角のように。
ヴィクトリアが「だあーってぇー」と唇をすぼめてぶーっとふてくされていると、途端に照明が消えて部屋は元通り、蝋燭の明かりのみとなった。
「あちゃー……やっぱりあの魔鉱石の量じゃこんなものか」
消えた照明を見上げながら、渋々と自分の席へ腰を下ろす。
玉座に腰をおろす桃色の髪をした少女がこほんと咳をひとつ。
「では、あらためて会議を行なうぞ。議題はむろん――」
ちらりと机の片隅に座るひとりを見やる。
「そこにいる人間界から来た男の処遇についてじゃ」
全員の視線がひとりの少年に注がれる。
少年は18歳の、どこにでもいるような高校生に見えた。その彼が口を開く。
「や、処遇って言ったって……なんの前触れもなしにいきなりここに飛ばされたわけだし……」
少年――真壁 至はそう言うと、ぽりぽりと頭をかく。
「黙れ! とぼけるでないわ!」
桃色の髪の少女が机をぱぁんと叩く。
「お主が魔族や魔物に詳しい人間だということはもうわかっておるのじゃ! このパンデモニウム女学園生徒会長であるヴェルフェゴールの目は誤魔化されんぞ!」
事の発端は今から二時間ほど前に遡る――
「いやー大漁大漁♡ 18歳万歳だな」
コミケ会場を後にする真壁は戦利品がぎっしり詰まったリュックの重みを感じながらホクホク顔で歩く。
むろん、中身は同人誌だ。それも18歳以上の。
「帰ったら、さっそく中身を吟味して……」
駅へ向かおうとした途端、真壁の周りの地面がいきなり歪み始めた。
「え?」
何が起きたのか考える間もなく、真壁はそのまま地面ごと歪んた時空の狭間へと吸い込まれていく。
「あああああああああ!!!」
目眩を覚えるくらいの極彩色の時空の狭間を駆けながら真壁はあらん限りの声で叫ぶ。
やがて眩い光が辺りを包んだかと思うと、そのまま地面に叩きつけられる。
「ッ……! てぇ……って、ここは……?」
尻をさすりながら辺りを見回すが、見覚えのない場所だ。少なくともさっきまでいた場所とは様相が違う。
「……え、あれ? もしかして成功しちゃった……?」
声のするほうを見ると、そこにはゴーグルをかけた白衣の少女が。
「やっぱボクってすごいや! 異次元から物体を取り出せるなんて!」
少女はそう言うとゴーグルを外して目を輝かせる。
「えーと、あんたは? それよりここは一体……?」
「やっぱり特異点とこの世界を結ぶ座標軸に異次元の座標軸に変換して、そこをここと繋がるように数式の配列変換したのが良かったんだ!」
真壁の問いを無視して、少女は構わずに手帳に目を落としながら自論をぶつぶつと呟く。
「おーい、聞いてます?」
「となると、これを応用してさらなる発明が……」
「人の話聞けって!」
「わっ、ビックリした!……って、ああゴメンゴメン。つい実験の成功が嬉しくってさ……ボクはヴィクトリア。ヴィクトリア・フランケンシュタイン!」
ふんすっと胸を反らしながら言う。彼女の顔の両側から垂れ下がった赤毛の三つ編みがふわりと揺れた。
よく見ると彼女の着ている白衣の下には学校の制服らしきものが見えた。
となると、ここは学校なのだろうか。
「えーと、それでヴィクトリアさん? ここはどこなんですか?」
「ヴィックでいいよ! ここは魔界だよ。キミは魔界に転移された、第二号の人間ってワケ! あ、第一号はボクのひいひいじいちゃんね」
ふたたびふんすっと胸を反らす。
「はぁ……って、魔界!? え、RPGでお馴染みのあの魔界!?」
「あーるぴーじーがなんのことか知らないけど、正真正銘の魔界だよ☆ それより」
そう言うなりヴィクトリアは真壁の手を握る。
「キミに会わせたい人物がいるんだ」
「会わせたいって……?」
赤毛の少女がこくりと頷く。
「この学園の生徒会長だよっ」
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