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第9話 再開

 サタンサンの売り上げは留まるところを知らない。


「強力な発泡がロケット燃料に使えるのではないか。」

「ダイナマイト代わりになる。」

「それより軍事利用しよう。」


 サタンサン争奪戦が始まった。20年の時が流れて、突如として大規模貯蔵施設での連続して爆発が起こった。施設の老朽化。一度泡が立ち始めたら制御が効かない。核燃料のような制御のための物質がない。冷却すれば止まるが体積が増える。圧力をかければ抑えられるがちょっとした振動で泡が出る。それを抑えるためにより高い圧力が必要になる。いたちごっこの末に、大爆発する。元々、地獄の水。欲に駆られた人間が扱うのは無理だったのだ。

「危険物質として一般での販売を禁止する。」

 消費サイクルの早い飲料水なら問題はなかったが、事業は消滅し、人々の記憶からも消えていった。一番喜んだのは、サンタの宣伝する炭酸飲料の会社だったのは間違いない。


「一体この国はどうなってるんだ。」

 閻魔が取り仕切るこの国は、信仰は薄い反面、どんな宗教行事でも無節操に取り入れる。好き勝手なものを拝むわりに、誰の言葉も聞かない。

 政治家たちは、「金無くば立たず」を信条とし、労働者は搾取されることに生きがいを感じている。人手不足、人材不足といいながら、未だに過酷で理不尽な環境から這い上がった者だけが重用される。口では助け合いといいながら蹴落とす。一度恩を売ったら一生奴隷のように見下され続ける。恥を知れというわりに、己の恥は感じない。

「捨てるゴミあれば拾うゴミあり」古くなった物を、もったいないといいながら、誰かに譲るわけでもく結局捨てていく。


「なんだか地獄のほうがましに見えますね。」

「それでも、世界の美徳と称される。」

 エコとエゴは紙一重。裏金と闇金が横行する国の末路が目に浮かぶようだ。

「金の力ですかね。」

 ベルゼブブが冷静に答える。


「天国の連中にそそのかされて、地獄も貨幣を導入したが、見直すべきかもしれんな。」

「問題は、お金というより蓄財でしょうね。消費期限がないから貯め放題。」

「なるほど。さっそく、全ての貨幣を消費期限付きにしよう。」

 サタンはすぐに部下に命じた。悪魔ほど仕事が速いやつはいない。神は六日働いたら一日休んだそうだが、悪魔は24時間年中無休。

「交換して期限を延ばすやつも現れるでしょうが、交換レートが消費期限に連動すればおのずと控えるでしょう。」


「サタン社長ー!」

 遠くで呼んでる声がする。

「人間に社長と呼ばれるいわれはないはず。」

「元社長、初代社長とお呼びするべきですかね。」


「サタンサンの製造部にいたんですが、一従業員のことはさすがにご存知ないですよね。」

「何か?」

「秘書さんもご一緒で。社長ならご存知かと思って。」

「だから何を?」

「ちょっと長い話になるんですが、よろしいですか?」


 三人は公園のベンチに腰掛けた。

「ある人の連絡先を知りたいんです。実は、女性運が悪くて。貧乏なため、安い国立大学を探し死ぬ気で勉強しやっと入ったんです。そこで同じ学校の女性に恋をしました。交際を申し込んだんですが、見事にふられました。」

「もてそうには見えないですからね。」

 バルゼブブは忖度しない。

「両親とも僕が子供のとき日本にきたんです。外国人はもてるって聞いてのに。」

「欧米のご出身ではないですからね。」

「メキシコですからね。この国にも差別はあるんだってその時感じました。」

 男はしばらく口を閉じて、空を見つめた。


「ですが、種が違うって断れたんです。」

「それはひどいですね。」

「でも彼女は差別することなく他の日本人と同じように接してくれていたんです。理由は後でわかりました。彼女は閻魔の娘だったんです。」

「閻魔の一族が通う学校って、どういうことです?」

「社長ありましたよ。獄立、エンマ大学。」

 それは地獄の鬼である獄卒を育成する機関。生きてる人間は普通は行かない。


「なにかの手違いですかね。閻魔庁に問い合わせてみますか?」

 ベルゼブブは事務的に尋ねる。

「いえ、あの世に興味があったので、面白かったです。そこで、社長の会社に就職もできましたし。」

「覚えてます。うちの会社は、大抵老い先短い老人ばっかりなのですが、確かに新卒が来るというので珍しがられました。」

「さすがは秘書さん。その老人だらけの社内で、経理にいた女性に一目ぼれ。一緒に仕事をする機会に恵まれ、いつか告白したいと思って思っていた矢先に倒産。最後に勇気を出して、思いを告げようとしたんですが、それ以上言ってはダメと口を塞がれました。私はあくまで同僚として接しているだけだと。」


「それで、その方の連絡先を知りたいと。ですが、こちらも守秘義務がありますからね。ご契約してもらないと。」

 サタンは契約書を手渡した。

「できれば結婚までお願いします。」

「それには先方のサインも必要になりますが、とりあえず仮契約ってことで。情報系のことは解約が効きませんからね。」


「で、お相手はどんなご老人で?」

「いえ、若い女性です。社長のように、背が高くて気品があって。困ったことも解決してくれる、魔女っ子みたいでした。なのに僕のことを頼りにしてくれて。」

「はて?そんな従業員いたかな?」

「社長、娘のあっ子さんです。」

 ベルゼブブはサタンに耳打ちをした。

「閻魔に勝ちましたよ。」


「ダメ。契約とりやめ。」

 そういってサタンは男から契約書を取り上げた。

「もう、サインしました。」


「大人になったら軽々しくサインしちゃだめって、親から教わらなかった?」

「親は何も。でも街であったサンタさんに言われた記憶はあります。」

 契約書を見ると、ウダのサインがあった。天国での記憶は消したが、人間界での記憶は残っていたようだ。

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