第17話 不適切
日本担当の営業成績が悪い。そのため魔王じきじきに出てきたのだが一向に改善されない。
「地震大国日本のために、復興に協力してくれないか。」
最近よくある相談だ。
「悪魔は契約者の私利私欲でしか動かないんです。そういうことは天使に頼んでください。」
と、断っている。召還数は伸びているのに、日本での契約数が伸びない理由だ。
「政治家を狙ってはどうか。」
経営戦略会議では、薄利多売は諦めようという声も増えている。
「やつらは、すぐ記憶にないと、サインしたことすらなかったことにしてしまう。嘘ならまだ対抗策もあるが、後で説明責任を果たすからと言ってるうちに、本当に忘れちまう。なんだか、『説明責任を果たす』と言うことで承認されたと思っているようで。」
「昔から陰陽師とか雇って、閻魔を困らせ続けてきた連中ですからね。自分の成功、他人の失敗が信条。われら悪魔は他人を不幸にすることが目的ではないですからね。」
契約者自身が不幸になる結末こそが悪魔の本業なのだ。誰の魂でも取り放題なんてことはない。
「安倍に始まり、安倍に終わる」ついこの前までそう言われてたが、今では、
不適切(処理)に始まり、不適切(会合)に終わる
とささやかれる。
「そもそも、今のやつらの願いなんてちっぽけ過ぎて、話にならん。あんな魂に価値はない。もっと邪悪で強力な欲望でないとな。ところで、地獄乱土のほうはどうなってる?」
「狭い国土ですから、高さを使うことにしました。地下百階。それぞれに色んな魔物が住んでいます。アトラクションも考えました。」
血の池温泉、誤植沼、針山治療ハリ・コッタ、灼熱サウナ、鬼爪エステ、死滅の卒塔婆、すべーる魔運転、蟹工船でいく釜飯屋と釜風呂風俗
「健康嗜好ブームのようなので。」
「閻魔の物まねって言われそうだな。地獄っぽいのは無いのか?」
「地上のほうがよっぽど地獄だらけで。借金地獄は序の口で、激辛地獄、シェア地獄、投資地獄、増税地獄、ワクチン地獄となんでもかんでも地獄と化しています。」
唯一残った案のが、カラオケ地獄。
「楽しいものから恐怖に変わるというのはいい。百階もあるんだ、もっとアイデアを出さないと企画も通らんぞ。」
アクマリン魔族館、呪物を集めたトイズ通り、灰化ぶりっ子死んでるかのジョー。キャラクタはマッキー雁とシニーソース。見所は食うか食われるかの掛け合い。キャストはツンデレラとヤンデレラ。
「お土産品も考えましたよ。ひとだましたい屋。」
「人魂とか死体とか物騒なものを売って大丈夫なのか?」
「人騙したい。ジョークグッズです。」
「まずは、どんなに傾けても動かない、ジットコースター。裏に強力な接着剤がついてます。欠点は、上の飲み物はこぼれます。」
「こちらは季節限定カネのなる木。」
「ただの丸太にしかみえないが?」
「年末になると皆これで鐘をついて鳴らすそうです。」
「こちらのホームページに色々な商品が載ってます。」