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第15話 タロット

「お父ちゃん、あの家族変やで。」

 柱の影から、ひょっこり顔をだしたあっ子の母がサタンを呼ぶ。

「ちょと失礼します。お手洗いに。」

 サタンはそそくさとその場を離れた。


「ヨミ、魔王と呼べ。」

「何かっこつけてんね。お父ちゃんはお父ちゃんやないか。それとも、おかあちゃんか?巷巷に女を作って父親らしいことは何もせんとおったくせに。」

「魔女との契約の儀式だから。子供は認知はできんから、就職は面倒みたろ。」

「それや。てて無し子やって、私に似て美人で優秀やのにどこも書類選考で落とされんねん。で、しかたなくや。結局、会社は倒産してもうたやんか。父さんが倒産なんて洒落にもならへんで。あんたがついとって何してたんや。」

「地上で大災害が続いて、死者があふれて地獄も大変だったんだよ。」

「そんなん、閻魔にまかせといたらよろしい。娘の結婚ぐらいきちんと最後まで世話したり。」


 悪気はないのだろうが、大阪のおばちゃんは、あの世にいっても口うるさい。

「で、なにが変だって?」

「そや、それや。魔女の必須アイテム、タロット。見てわからんか?その首の上のはハロウィンの飾りか?しゃあない、結論だけいくで。問題はこれや。こっちも、こっちもひっくり返ってるやろ。こんなん初めてやわ。どない人生なんや?」

「そんなんいいから、スーっと言え。」

「スー。」

「それが結論か?」

「あんたがスーと言えいうさかい、スー言いましたんで。それとも何か?スーよりソースが良かったんか?ちょっと皆、聞いて。いいこと教えたる。スープって、酢っぽうないのに何でスープっていうんか知ってるか。あれ具が有りまへんやろ。せやから、水みたいにスーっと飲める。ところが、水とちごうておなかに溜まりよんねん。で、つい後ろからプッ。スーと飲んでプ。スープちゅう訳や。」

「ようそんなデタラメゆうな。」

「スープの語源なんて誰も知らんて。言ったもん勝ちや。」

「お前の姿は見えんし、声も聞こえん。」

「はあ、そりゃ残念。」

「結論を急げ。早く戻らないと怪しまれる。」

「そやな。トイレ行きますゆうて、なかなか戻って来んかったら、大やと思われるさかいな。」

「しょうもないことばっかり言って。」

「ちょっと奥さん聞いた?わてが大言うたら、しょうもないって。大言うたら小って、そんなん今時、赤ん坊でも笑わんわ。」

「見えてないし、聞こえてない。で、結論は?」

「そや、肝心なこと忘れとった。」

「忘れてた?」

「そや、あんたがスーっと言えとかいうさかい。これ見てみ。審判と死神がひっくり返ってるやんか。こいつら互いに意味が真逆やねん。」

 そりゃ、天国で審判がひっくり返ったことを指しているのだろう。


「大事なのは本人だろ?」

「それが、もっとけったいなんや。何度うらのうてもやな、二人の未来が見えへんねん。吊るされた男の横で悪魔がな、くるくる回りよる。」

「お前のタロットは当てにならんからな。」

「何いうてんねん。魔女の力は魔王の魔力やないか。わしに力が無いゆうんは、あんたの力が無いんと一緒やで。」


「お待たせしました。」

 サタンは何事も無かったかのようにしれっと戻ってきた。


 別れ際にサタンは思い切って本題を切り出した。

「ところで、息子さんの結婚感なんて伺ってます?」

「それは解りませんが、あいつには人間いつ天国にいくかわからない。だから、やりたいことがあったらすぐに行動しろと教えてます。」

「やりたいことをすぐに・・・ですか。」

「夫婦なんて相性ですからな。わたしら夫婦は心も体も相性抜群です。なんせ死ぬも生きるも一緒にって誓い合ってますから。」

 サタンはヨミを連れて慌てて魔界へ戻った。

「随分せっかちな人ですねえ。あなたは奥手で手をつないだだけで真っ赤になってましたよね。ウダはあなたそっくりですよ。」


「急げ、ベルゼブブ。すぐに行動なんて、できちゃった婚なんてなったら最悪だ。」

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