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終わらない夢

コスモスの丘で、宇宙(そら)に触れる

作者: となりのOL
掲載日:2023/12/19

 ()の元で見るあなたは、血管が青く浮きそうなほどに儚く、ただ、頬と唇が(あか)く艶めいていた。


 吹き上げる風に舞う髪が、紅を隠す。

 髪の毛の一筋一筋が(やわ)く、踊るように散っていた。

 

 手で抑える隙間から、ふと目線が合う。

 

「ここは、俺の特別な場所なんだ」

 

 そう言って、ふわりと浮かべる微笑みに促され、眼下に広がる景色に視線を落とした。

 

 そこは、一面のコスモスが咲き乱れる丘だった。

 青と緑の間で、風に揺れ、淡くコスモスが散らばっている。


「ここに人を連れてきたのは、初めてだな」

「どうして、俺だったの?」


 ……あなたは、特別だ。

 俺にとっても……周りの人間にとっても。


 儚くも優しい光に触れたくて、誰もが近づき(こうべ)を垂れる。


 だが、俺は知っている。

 その柔らかな笑みの裏で、誰にも見せない一面があることを。

 

 それは時に、すべてが壊れそうなほどに繊細で……。

 それは時に、すべてを壊しそうなほどに獰猛で……。

 

 あなたが奥深くに隠しているそれは、誰の手にも余るものだ。

 静かに見つめる瞳に、こちらを伺う影がちらつく。


「……俺で良かったの?」

「お前だから、だよ」


 ここは、その奥底に触れる場所なのだろうと感じた。

 底知れぬ深淵(しんえん)に、背筋が少し、寒くなる。


 ただ、同時に高揚(こうよう)もしていた。

 まだ誰も知らないあなたに、触れるチャンスなのだと。


 足元にしゃがんで、ピンクのコスモスに手を伸ばす。

 花弁はしっとりと柔らかく、指に吸い付いてくるようだった。


 どこまでも続くコスモス畑。

 地平線の先まで混じるように続く、赤と白。


 赤は、目の前で揺れるあなただ。

 誘うように俺の心を掻き立て、決して消せない染みを作る。

 

 白は、まだ何も知らない俺だ。

 赤に焦がれ、憧れ、ただ手を伸ばす。


 ピンクは、これから先の俺だ。

 赤に触れ、傷付きつつも、より近く、深く色付くことを願う。


「まだ冬前とはいえ、少し寒かったかな」


 ふと思い出したようにそう言って、ポケットからニットの帽子を差し出してきた。

 瞳に、染まりゆく俺の姿が映る。


「……いいの?」

「いいよ、俺は使わないから」


 初めてだ……あなたから、何かをもらったのは。

 

 受け取った帽子は、(かす)かに温かかった。

 被ってみると、その柔らかさに脳が痺れてくる。

 

 まるで、あなたに(じか)に触れているようで……。

 頬が熱くなってきて、隠すように帽子を深く被った。

 

 もうすぐ日暮れだ。

 暮色に染まる空に、三日月と星が浮かびだす。


 ……ああ、綺麗だ。


 この世界の、何もかもが。

 あなたのいる、この景色が。

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