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資産家の秘宝  作者: 目262
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「先生、宝探しをしてみませんか?」

 研究室で午後の缶コーヒーを啜っていた教授に、ゼミ生のアミが廊下から入ってくるなり話しかけた。

 前期試験が終わり、大学は夏休みに入る。地方から出てきた学生の殆どは帰省する。アミもその1人だ。何も聞いていない体の教授の横で、アミは勝手に話し始めた。

「昨日母から電話があって、1週間前に実家の旧い蔵を整理していたら100年前の先祖が残した日記が出てきたんです。その中に子孫のために宝を残したと書かれていたんですよ。両親は記載されていた場所を隈無く探したんですけど、何も見つからなかったそうです。でも、どうしても諦めきれなくて、実家に戻ったら私にも手伝って欲しいと」

 教授はひたすらコーヒーを飲み続けた。アミの方もひたすら話を続ける。

「だけど、1週間探して見つからないものが、私1人加わっても出てくる訳ないですよ。両親はがめつい性格だから、実家に居る間はずっと私に宝探しをさせるはず。そんなの嫌ですよ。だから先生にも加わっていただけないですか?」

 何故自分にそんなことを頼むのか?友達にお願いすればいいじゃないか。

 教授はそう思って、コーヒーを飲みながら首を横に振った。しかしアミは話を止めない。

「先生はこの間、助手さんが失くした物を見つけたじゃないですか。こういうことに才能があるんですよ。見つからなくてもいいんです。大学教授が探しても見つからなければ両親も諦めるはず。だから一緒に来てくださいよ。もちろん結果に関わらずお礼はします。実家に居る間に入り用のモノも、我が家が全部負担しますから」

 今のご時世、教授が学生から何かを貰える訳がない。大学にばれたら要らぬ疑いをかけられて最悪の場合、失職の恐れもある。教授は缶コーヒーを口に着けて喉を鳴らしながら、再び首を横に振った。

「自慢じゃないけど、我が家は何百年も続く旧家です。蔵は幾つもあって、その中には面白いものもあるでしょう。それを先生に差し上げますから」

 その言葉には多少惹かれるものがある。自分の研究テーマに役立つ品が見つかるかもしれない。大学にはフィールドワークと伝えれば、経費だって出るだろう。暇という訳ではないが、久しぶりに遠出をするのも悪くない。

 空になった缶コーヒーをデスクに置いて、教授は首を縦に振った。

 それから1時間後、教授はアミの運転するポルシェ・カイエンの助手席に、身一つで座っていた。まさか当日、それも即刻の出発とは思わなかった教授は運転席の彼女に抗議したが、必要なモノは全部現地で手に入れれば良いし、その不快感も含めて礼はすると言われた。

 アミは贅沢な生活をしている。身の回りの品は全部ハイブランドで、東京での住まいも湾岸にあるタワーマンション最上階だ。その全てが実家からの仕送りで賄われているというのだから、どれ程の資産家か想像できる。

 カイエンは高速をひた走り、数時間後にはアミの実家に到着した。

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