3話 新しい日常③
それは、あまりにも異様だった。
銀色の髪に桃色の目、ファンタジーの世界からやってきたようなエルフが、制服のブレザーを着てそこにいる。
席を確認して場を動いたのを見て我に返り、自分も同様に席を確認し着く。
加えて異様なのは、周りの誰もそれを気に留めていない事だ。
担任の挨拶から入学式、その後諸々の説明を終えるまで。
そっちの方が気になって式どころではなく、いつの間にか時間は過ぎ、気付けば放課後に。
ずっとこんな調子なのもいけないと思い、気分転換に風に当たりにと外へと。
途中で座席表をちらっと見。その人の席には「上利田 春留」と名前があった。
気分転換ついでに来る時とは違う道、直進すればいいところをあえて脇道に入っていく。
並ぶ一軒家の中、存在感を放つ銭湯、併設されてるコインランドリー。
家がまばらになり緑が増えてきたところで、コの字に折り返し。
そうして着いた突き当りには古い鳥居。周囲の木が濃いが、その奥に社があるのが見える。
そこで曲がり大きな駐車場の脇を通り、帰路であるバス停のある大通りに出る。
寄り道の間に1本行った後なのか、そこでバスを待っている人は少なく。
だけど、出来過ぎた偶然がそこにあった。
周囲に他の人は見当たらない。ずっと気になるくらいなら、いっそ思い切って直接当たってみるべきか。
「ねぇ、この間道を聞いてきた人…だよね?」
と、ベンチの隣に座りながら。
少し思考ののち相手も気付いたようで、声を張って答える。
「あ、あの時の!」
「まさか同じ学校…それも同じクラ──」
「私の事、どう見えてます!?」
予想外の質問返し。一見奇妙な質問だが、自分の疑問にも直結する話だ。
「どうって…銀色の髪とか?」
「あぁやっぱり……でも見つかってよかった。」
なにやら納得されたようだが、こちらは意図が汲めず。
「えーと…何がどういう事なの?」
「…こうなった以上、誤魔化しても仕方ありませんね。」
その人が立ち上がりこちらに向き直り、凛々しく、かつにこやかに名乗った。
「シント旧騎士家系、ヴェリダール・ロンドラーレ。
こことは異なる世界より、『調査』の為に遣わされてきました。」