最終話 分かれる帰路
そして迎えた冬休み。
程よく涼しい春風が吹き抜ける麗辺駅前。
これから3年に進級するにあたって、親と色々と話し合う事もあり一度帰省だ。
一週間と経たず戻ってくる予定ではあるが、それでも一旦離れると思うと、この風景にも想いを馳せるものがある。
ゴーストファインダーのレイドの最初が、この付近であったハロウィンイベントだっけ。それが恒常化して日替わりになって、状況をかき乱してきて。
その果てが、この大通りまっすぐ向こうに見える、あの山だ。まだ黒い煙状の魔力が閉じ込められているが、流石に多少は薄くなった…気がする。
初めてここに来た時は一人で、大荷物抱えて不安に駆られたりしてて。
けど今はもう、見慣れた世界からの出口だ。
それに、偶然のスケジュールの一致もあって、まだ一人じゃない。
「…やはりたった2年でも、滞在していた場所を離れるというのは、寂しいものですね。」
駅の目の前のバス停終点、俺に続いて降りるもう一人。
「ハルルがこっちの世界に来た時も、この場所からだったのか?」
「そうですね、世界の繋がりが強い場所がいくつかあって、その内の1つがこの近くに確保されています。
ユートさんの行き先は…あちらでしょうか?」
そう言い、ハルルが駅の方を指す。
「あぁ、ここで乗り換えだ。」
「では、同行できるのはここまで、となりますね。」
「…またこっちに来れるか、分からないんだよな?」
「そうですね、次に当てられる任によっては、当面手放されないでしょうし。
…別にユートさんの方から来てもいいのですよ?」
魅力的な誘い、ではあるんだけど。
「今年は俺の…本来の日常の方が忙しくなると思う。
だから纏まった日数となると、夏か、1年後か、もっと……。」
「そう、ですか。
でもこれからの幸運と、私の希望も込めて、こう言いましょう。」
ハルルが着けてる魔法道具のチョーカーを操作する。
見た目にも現れてた魔力が消え、魔法道具としての機能が停止させられる。
「…マタネ。」