230話 平穏な時間は瞬く間に
それから先は、驚くほど時間の進みが早く感じた。
エン達が早めに帰らないといけない、という事から始まって。
竜という強い魔力の持ち主を長く滞在させるのはやはりあまり良くないらしく、本来ゲートを繋ぐ予定だったタイミングでの帰還となった。
なんだか久々の再会だったのにいいように使っただけの感じで悪い気がしたが、エンの「その子が望んでやった事」という言葉、なによりこうして一緒にいるだけでリラックスしてるストラトスフィアを見て、俺が無暗に引きずるのも違うか、と割り切る事にした。
ロロはといえば、オロチ戦前と何ら変わりのない、いつもの見慣れたサイズのロロだった。
爪がエグくなった分、床の方が心配になったが、そういえばアパート丸ごと身内が買い取ってたし大丈夫…なのか…?
ただロロとしては、知らない奴が俺に馴れ馴れしくしてるのが不服の様子だった。
オロチ戦の時に高濃度魔力の症状が出てたショウヤは、始業式の時にはすっかり元気になって来てて。
ショウヤのあのロボの召喚術みたいなのは、あの場が魔力に満ちた空間だったからこそできた事で、今はもう使えないらしい。
俺みたいに数日魔界に滞在してみたらとか、また何らかの要因で場所の魔力が高まったらとか、色々と連鎖して思う事はあったが、あの1回で「直に関われてない」という不満は解消されたようで。
むしろ気が乗ってしまった以上、明穏寺院の書物からの怪異分布図を完成させるまで止まれない、と意気込んでいた。
一方、事態を作り出した元凶の位置情報ゲーム、ゴーストファインダーはというと。
もうこの地域はターゲットから外れたらしく、今度は別の知らない地域の名前をレイドボス予告でよく見るようになった。
この辺りが全く指定されなくなった訳ではないが、わざわざ俺まで話が来るには至ってない。
平和に越したものはないとは思うものの、やはりどうしても寂しさはある。
これまでの忙しさになれてしまったせいで、特に変わった事が起こらない日常は加速して進んでる気がして。
さほど時間が経った感覚の無いまま、3月の末を迎えた。