227話 姿を現すレイドボス③
エン達が後方に下がり、オロチと相対する。
轟く咆哮、敵対の意思。
術の準備だろう、持続的な電気の音を背後に、オロチに向かっていく。
どう攻め込むかで少し迷ったが、先陣を切ったのはロロだ。
とにかく行動だ。ロロと違う軌道を取り、空を駆ける。
飛行の制御はストラトスフィアがやってくれている。俺はオロチの出方に集中する。
ロロに気を取られるオロチ。その隙に…と近付いてはみたものの。
とにかくでかい。斬りつけた所でダメージとなるか怪しいものだ。。
それでもやるしかない。油断してるオロチの脇に、下降しつつ大きく斬りかかる。
…やはり僅かに魔力を漏出させたものの、すぐに治るのか傷跡を残せていない。
いや、見た目には残っていなくても、僅かには通ったんだ。
なら全くの無駄という訳でもない。とにかく行動あるのみ。無茶な動きになるけど、頑張ってくれよストラトスフィア。
少し距離が空いたのを助走とし、最後に1回転を加えてハルバードでの一撃をぶちかます。
しかし返ってきたのはコンクリートの壁でも殴りつけたような手応え。さっきより多く魔力の漏出が見えたが、やはり傷跡は残らず。
それでもオロチの気には障ったらしい。向こう側のロロに向いてた目線が、こちらに来る。
同時に空を泳ぐ体躯が流れ、衝突しそうになったのを咄嗟に飛びのく。
そのまま高度を上げ、オロチを上へと誘導する。
こちらを向くオロチの牙の隙間からは、漏れ出す炎。やば、龍ならそういうのあってもおかしくないよな。
けど飛んでくる横槍。見た所電撃のようだけど、レーザーの如き一撃。
それがオロチの頭に命中し、狙いをずらす。直線状に走る炎が、すぐ近くを通り過ぎ…いや、翼に少し受けている。魔力で生成した部位だからまだセーフ……。
続けて数発、同様の追撃が入る。流石に多少は効いているように見える。
だが、有効打があると分かればオロチ側の事情も変わる。
エンの射撃が一旦止み、オロチに行動の自由が戻る。オロチにとっての「敵」は、最早こちらではない。
進路を大きく曲げ、エンの方へと向かっていく。
行かせる訳にはいかない、が、止めるにも力不足。
…いや、魔力を分散させてるから足りないのか。ならば。
大して刃が通らないハルバードなんて持ってても仕方ない。それを振るい脅威として誇張する体躯もいらない。
両方とも解き、全ての魔力をロロへと集約させる。
『頼む、ロロ!』
遠隔で魔力を受け取ったロロがオロチと並走、そしてオロチの頭部に追いつく。
頭部に飛びついたロロは、オロチの進行を阻害できるサイズとなっていた。
オロチがロロを振り払おうと暴れる。しかしロロは離さない。
標的であるエンへの進路が、ふらふらと逸らされていく。
力量自体は圧倒的に不利、けど文字通り目先の敵の排除に躍起になってくれている。
けどストラトスフィアの最大出力が、ずっと続く訳も無い。感覚の共有により伝わる疲労感と共に、ロロが光る魔力の粒子となって消失する。
それでも、エンの大砲じみた一撃を入れさせるには十分な時間稼ぎとなった。