224話 当日を迎え⑤
「突き抜けろ、『フォトン・オーバーランナー』!」
そのバイクが自走し逃げた敵を追い、魔力の煙へと散らせていった。
直後、バイクに変形したロボも魔力の粒子へと散っていく。
「う…く、頭いてぇ……。」
同時に、術の主であるショウヤがふらふらと、近くの木に手をつく。
「…俺もなった事あるから分かる。
どうだ、歩けそうか?」
「どうにか、な。」
そう言いゆっくりとだが歩き始めるショウヤ。心配ではあるが、ここは何も言わず後を追う。
「…貴様ら、何があった?」
仮設拠点に戻った時、ソウクロウがぽつりと問う。
「とりあえず、ショウヤ休ませてやってくれ。」
「…心得た。」
しかし追及をこらえながら、ショウヤが後方の陰陽師に目線で指示する。
その人にショウヤを任せ、こちらはソウクロウに招かれる。
「しかし、見事に丁度のタイミングで来たな」
と、時計を見ながらソウクロウが。
「丁度って、何がだ?」
「想定以上に妖力の流入が多い。
遠方側の完了報告を待ちたい所であったが、どうやらその余裕は無いようだ。」
こちらもスマホで時間を見る。ゴーストファインダーのレイド開始時間が10時、時計は丁度その1分前を示している。
「大きな波が来る。あらゆる脅威に備えよ。」
波とは表現されたが、それは一瞬だった。
地面がひび割れたかのような錯覚、漏れ出す霊的な光が地面に脈の模様を描く。
白色のそれは山頂に向かうにつれてグラデーションし、濃い赤へとなっていく。
そして、見えない何かが割れる音。
溶岩のように赤黒い巨大な龍が、空へと昇っていく。
「やはりこの現象、似ています。」
と、この場に居合わせたハルルが呟く。
「似てるって、何にだ?」
「私達の世界にある現象のひとつ、強い個の魔の引力は他の魔を集め、己を更に強める。
その現象を統べる存在は、こう呼ばれます。魔王と。」